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2019年10月29日

被相続人との関係、あるいは相続人間の関係などにより、特定の人に財産を相続させたくないと考えることがあります。このようなケースにおいて、生前に相続放棄をさせることはできるのでしょうか。相続放棄の可否と押さえておきたいポイントを解説します。相続の準備を進めている方は参考にしてください。
 

生前に相続放棄させることはできない

残念ながら、生前から相続放棄をさせることはできません。なぜ相続放棄をさせることはできないのでしょうか。
 

家庭裁判所が受け付けてない

相続放棄は被相続人の最後の住所地を管轄していた家庭裁判所に、申述書などを提出することで行います。被相続人の生前中は家庭裁判所が相続放棄を受け付けていないため、相続放棄できません。
 

生前に作成した誓約書も無効

家庭裁判所が受け付けていないのであれば、生前に相続を放棄する誓約書を作成すればよいと考える方がいるかもしれません。有効な案に思えますが、法令上の相続放棄ではないため効力を発揮することはありません。誓約書を作成することで相手に相続権はないと思い込ませることはできるかもしれませんが、相手の無知を利用することになるので、他の方法を検討するほうがよいでしょう。
 

生前に実施できる相続放棄の代替案

財産を相続させたくない人がいる方は、生前に実施できる以下の代替案を検討してみてはいかがでしょうか。
 

遺言書と遺留分の放棄の併用

生前に相続放棄できないのであれば、遺言書を残せばよいと考えた方がいるはずです。確かに有効な策ですが、これだけでは十分ではありません。相続させたくない人が遺留分減殺請求を行うと、遺留分に相当する相続財産を渡さなければならなくなるからです(遺留分は法定相続人が受け取れる最低限度の相続財産)。
 
遺留分は生前であっても、家庭裁判所の許可を得ることで放棄できます。ただし本人の自由意志であるかどうかなどが考慮されます。また放棄が認められた場合も、遺留分と同等程度の贈与が必要になるケースがあります。いくつかの注意点はありますが、遺言書と遺留分の放棄を組み合わせることで、特定の人以外に相続させることができるようになります。
 

推定相続人の廃除

被相続人は相続人から虐待や重大な侮辱を受けたとき、あるいは相続人に著しい非行があったときに、家庭裁判所に相続人の廃除を請求することができます(遺言書で申し立てることもできます)。審判により廃除が決定すると、相続人は相続権を失います。ただし排除された相続人に直系卑属(子など)がいる場合、直系卑属が代襲相続人になり財産を相続します。
 

相続欠格

被相続人や他の相続人を殺害する、脅迫や詐欺などで遺言書を書かせたなどの欠格事由に該当する場合、相続人は相続権を失います。ただし相続欠格の場合も代襲相続が発生します。よって相続人に直系卑属(子など)がいる場合、直系卑属が代襲相続人になり財産を相続します。
 

生前贈与

相続させたくない人以外に、財産の大部分を生前贈与することも代替案として挙げられます。ただし生前贈与を受けられなかった人に、遺留分減殺請求される恐れがある点には注意が必要です。以下の財産は、遺留分算定の基礎になる財産の価額に加えられます。
 
・相続が始まる前1年以内に贈与された財産
・遺留分を侵害すると知って行われた贈与
・遺留分を侵害すると知って行われた不当な対価による有償行為
 
また生前に被相続人から特別な援助(特別受益)を受けていた場合も、遺留分減殺請求の対象になる可能性があります。特定の人に財産を相続させたくない方は、以上に該当しない贈与であることを確かめておくと安心です。
 

債務整理

被相続人に借金がある場合、支払い義務は相続人に承継されます。子どもなどに支払い義務を承継させたくない方は、債務整理を行うとよいかもしれません。債務整理とは、借金をしている人が生活を立て直すため借金の減額・免除などしてもらう手続きです。債務整理には、債権者との話し合いで借金の減額や金利の引き直しをしてもらう任意整理、借金の返済が難しいことを裁判所で認めてもらい、減額された借金を数年かけて返済する個人再生、借金を返済する財産がないことを裁判所で認めてもらい、支払いを免除してもらう自己破産があります。債務整理で生活を立て直すことで、借金を子どもなどへ承継させないことができます。
 

生前に相続放棄はできない。代替案の検討を

相続放棄は、裁判所に申述し認めてもらうことで行えます。生前に申述しても裁判所が受け付けてくれないため、相続放棄はできません。特定の人へ相続させたくないと考えている方は、他の方法を検討するべきでしょう。例えば遺言書と遺留分の放棄を併用すること、生前贈与を積極的に活用することなどが考えられます。いずれを選ぶにせよ専門的な知識が必要になるので、生前の相続放棄が気になる方は専門家に相談するとよいでしょう。

代表プロフィール

税理士法人エール
永江将典

近畿税理士会所属。税理士法人エールの代表税理士を務める。
相続の申告をする方のストレスを減らしたいという思いで2012年で開業。

生前対策や相続税申告だけでなく、
遺言書・遺産分割協議書の作成や成年後見人、相続登記など、様々な相続事案に対応。
相続に関するすべてのことが解決できるサービスを提供している。

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