目次
相続税の生前対策|不動産の評価圧縮効果と他の対策との比較ポイント
相続税対策としての不動産評価圧縮は、「同じ1,000万円の資産でも、現金より不動産の方が税務上の評価額を低くできるため、相続税そのものを小さくする手法」です。
結論として、相続税の生前対策として不動産を活用する場合は、「小規模宅地等の特例などで土地評価を大きく下げる対策」と、「贈与・生命保険など他の対策」とを比較しながら、数字で効果とリスクを確認して選ぶことが重要になります。
相続税の生前対策における不動産の評価圧縮とは、現預金などの財産を不動産に組み替えたり、特例を活用したりして「相続税評価額」を引き下げることを指します。
一言で言うと、「資産の中身を工夫して、同じ実勢価値でも税金の計算上は小さく見せる」ことが、不動産を使った評価圧縮の狙いです。
この記事のポイント
- 不動産評価圧縮の基本は、「現金→不動産への組み替え」と「小規模宅地等の特例などの評価減」を組み合わせることです。
- 同じ1億円でも、現金のまま相続する場合と、不動産+小規模宅地等の特例を活用する場合とでは、相続税評価額が大きく変わるため、数字での比較が不可欠です。
- 不動産以外にも「生前贈与」「生命保険」「法人化」などの対策があり、相続税の生前対策として不動産を活用する方法は、あくまで選択肢の一つとして他手法と組み合わせるのが現実的です。
今日のおさらい:要点3つ
- 評価圧縮のキーワード
評価圧縮のキーワードは「不動産評価」と「小規模宅地等の特例」。 - 節税効果とリスクは表裏一体
マンション投資や土地の組み替えは、節税効果と同時に空室・下落リスクも伴う。 - 数字で比較して選ぶ
不動産・贈与・保険などを数字で比較し、自分の家族に合う組み合わせを選ぶことが大切。
この記事の結論
- 相続税の生前対策として不動産の評価圧縮を行う場合、現金を不動産に変え、小規模宅地等の特例などを併用することで、相続税評価額を大きく下げる方法です。
- 不動産は、時価の70〜80%程度で評価されることが多く、さらに最大80%の評価減特例を重ねることで、現金のままより相続税を大幅に抑えられる可能性があります。
- 一方で、マンション投資などは空室・値下がり・修繕リスクがあり、「節税効果>リスク」となるかをシミュレーションしたうえで判断する必要があります。
- 結論として、不動産評価圧縮は強力な相続税対策ですが、贈与・生命保険など他の手法との比較と組み合わせを前提に、専門家と一緒に長期計画として設計すべきです。
相続税の生前対策|不動産の評価圧縮とは?どこまで下げられるのか
結論として、不動産評価圧縮は「評価の前提を変えることで、同じ実勢価値でも相続税の計算上の金額を下げる対策」です。
一言で言うと「現金より不動産の方が低く評価される」
現金や預貯金は、相続税評価額がほぼ100%=額面どおりです。
一方、不動産は「路線価」や「固定資産税評価額」をもとに評価され、これらは公示地価(≒時価)の80%前後の水準で設定されることが多いため、同じ1億円でも不動産に組み替えるだけで評価額を2割程度圧縮できる可能性があります。
さらに、小規模宅地等の特例などを適用すると、評価額を最大8割減額することも可能で、「現金のまま」との差が一気に大きくなります。
小規模宅地等の特例で最大80%減額
小規模宅地等の特例とは、一定の条件を満たす自宅・事業用・貸付用の土地について、相続税評価額を最大80%(貸付用は50%)まで減額できる制度です。
例えば、評価額4,000万円の自宅土地に特定居住用宅地等として特例を適用すると、330㎡までの部分は80%減額され、評価額を800万円にまで下げることも可能とされています。
このように、「不動産+特例」の組み合わせにより、実勢価格とのギャップを大きくすることで、相続税額そのものを圧縮できるのが評価圧縮のポイントです。
マンション投資による評価圧縮のイメージ
マンション投資などの不動産投資を行うと、建物は固定資産税評価額ベースで、土地は路線価ベースで評価されます。
事例として、1,000万円の現金を都心マンション一室に投資し、建物評価が時価の50%、土地評価が時価の80%だと仮定すると、相続税評価額は全体として時価より圧縮される形になります。
ただし、ローンを使う場合は債務控除も含めた全体の構造を見なければならず、「圧縮効果だけ」で判断するのは危険です。
相続税の生前対策|不動産と他の対策はどう違う?主な手法の比較
結論として、不動産評価圧縮は「評価額を下げる対策」であり、生前贈与は「財産そのものを減らす対策」、生命保険は「納税資金を確保する対策」という違いがあります。
不動産評価圧縮 vs 生前贈与
一言で言うと、不動産評価圧縮は「資産の形を変える」、生前贈与は「資産の持ち主を変える」対策です。
不動産評価圧縮
- メリット:評価額を下げながら資産を手元に残せる。小規模宅地等の特例で一気に圧縮も可能。
- デメリット:空室・下落リスク、管理負担、不動産取得税・登録免許税などの初期コスト。
生前贈与(暦年贈与・相続時精算課税など)
- メリット:贈与した分は相続財産から直接外れるため、シンプルに遺産総額を減らせる。
- デメリット:贈与税率が相続税率より高くなる場面もあり、生前贈与加算のルールにも注意が必要。
相続税の生前対策として不動産と生前贈与を比較する際は、「評価圧縮と税率」「初期コスト」「家族への分配バランス」を並べて検討することが重要です。
不動産評価圧縮 vs 生命保険
生命保険は、「評価を下げる」というより「相続税の納税資金を準備する」意味合いが強い対策です。
死亡保険金には「500万円×法定相続人」の非課税枠があり、この範囲内なら相続税の対象外で受け取れる一方、保険料というランニングコストが発生します。
不動産は相続税評価額を下げる効果が大きい一方、現金化までに時間がかかるため、「不動産で評価圧縮+保険で納税資金準備」という組み合わせが現実的な選択肢になることも多いです。
不動産評価圧縮 vs 何もしない場合
初心者がまず押さえるべき比較は、「現金のまま持ち続ける場合」と「不動産に組み替えた場合」です。
現金のままの場合、相続税評価額はそのまま100%であり、節税余地は「控除や特例」に限られます。
一方、不動産に組み替えた場合、評価額が時価の70〜80%+特例による追加圧縮が期待できるため、「何もしない場合より相続税がどれくらい減るか」を試算する価値があります。
相続税の生前対策|不動産評価圧縮のリスク・注意点と向いているケース
結論として、不動産評価圧縮は強力な一方で、「節税優先で動くと資産運用として失敗する」リスクがあります。
一言で言うと「節税だけで不動産を買ってはいけない」
マンション投資やアパート建築は、「節税になる」と勧誘されることも多いですが、実際には以下のようなリスクがあります。
- 空室リスク: 想定通り入居がつかず、家賃収入が計画を下回る。
- 金利リスク: 変動金利ローンの場合、金利上昇で返済負担が増える。
- 修繕・管理リスク: 大規模修繕や管理費が想定を超えて発生する。
相続税が減っても、手元キャッシュフローが悪化すれば、「節税したのに生活が苦しくなった」という本末転倒の結果になりかねません。
小規模宅地等の特例の要件を満たせないと効果が出ない
小規模宅地等の特例は、「誰が・いつまで・どう使うか」といった要件が細かく定められており、条件を満たさなければ適用されません。
例えば、自宅の特例では「配偶者」または「同居親族」が相続し、その後も居住を継続することが条件とされるケースがあり、将来子どもが別の場所に住む予定だと使いにくいこともあります。
一言で言うと、「特例を当てにして不動産を動かす前に、その特例が本当に自分の家族に当てはまるか」を確認することが必須です。
不動産評価圧縮が向いているのはどんな家庭か
相続税の生前対策として不動産の評価圧縮が向いているのは、ざっくり言えば次のようなケースです。
- 一定以上の現預金・金融資産を保有しており、相続税の発生が見込まれる。
- すでに不動産を保有していて、特例や評価見直しの余地がある。
- 将来、家族がその不動産を継続して利用・管理していく見通しがある。
逆に、「資産規模が小さい」「相続税の心配がほとんどない」家庭の場合、不動産評価圧縮のためにわざわざリスクを取る必要性は低く、他のシンプルな対策で十分なことも多いです。
よくある質問
Q1. 不動産に変えれば必ず相続税を圧縮できますか?
A. 一般に評価は下がりやすいですが、物件や特例の有無次第で効果は大きく異なり、必ずしも「不動産=得」とは限りません。
Q2. 小規模宅地等の特例を使うとどれくらい下がりますか?
A. 条件を満たせば、自宅や事業用地で最大80%、貸付用地で50%まで評価額を減額できる制度です。
Q3. マンション投資は相続税対策として有効ですか?
A. 評価圧縮効果はありますが、空室・金利・修繕などのリスクも大きく、収支と節税効果をシミュレーションして判断する必要があります。
Q4. 不動産評価圧縮と生前贈与はどちらが有利ですか?
A. ケースによりますが、不動産は評価を下げて保有し続ける対策、生前贈与は財産自体を減らす対策であり、併用してバランスを取ることも多いです。
Q5. 不動産より生命保険の方が安全ではないですか?
A. 生命保険は納税資金の確保と一定の非課税枠に優れますが、評価圧縮効果は限定的で、不動産とは役割が異なります。
Q6. 不動産評価の見直しだけで相続税を減らせることはありますか?
A. 土地の分割方法や形状補正、路線価の適用方法を見直すだけで、評価が下がり相続税が減るケースもあります。
Q7. 不動産を使った相続税対策はいつ相談すべきですか?
A. 特例の要件や賃貸実績が必要な場合が多いため、「相続の数年前」ではなく、「余裕を持って検討したいと思った時点」で相談するのが理想です。
まとめ
- 相続税の生前対策として不動産の評価圧縮を行う方法は、現金を不動産に組み替え、小規模宅地等の特例や評価見直しを活用して、相続税評価額を下げる強力な手法です。
- ただし、マンション投資などには空室・下落・修繕・ローンといったリスクがあり、「節税効果だけ」で判断すると失敗しやすい特徴があります。
- 結論として、不動産評価圧縮は、生前贈与や生命保険など他の対策と比較・組み合わせながら、数字と家族の将来像をもとに専門家と一緒に設計していくべき相続税対策です。









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