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認知症になる前に始める相続税の生前対策と応急準備
認知症になる前の相続税対策は、「判断能力があるうちに、最低限の応急対策(口座・不動産・遺言・代理権)を一気に整えておくこと」が最も重要です。
結論として、相続税の生前対策と認知症対策では、①お金を動かせなくなるリスクへの応急対応、②将来の資産管理ルールの準備、③相続税の観点を押さえた最低限の生前対策を、期限付きで優先度順に進めることがポイントになります。
認知症になると、銀行口座の引き出しや不動産の売却・贈与といった重要な財産行為が難しくなり、それ以降に新しい相続税対策を打つことはほぼ不可能になります。
一言で言うと、「認知症になる前に、資産をどう動かし、誰に任せ、どのように承継させるか」を決めておくことが、相続税の生前対策における最大の”応急準備”です。
この記事のポイント
- 認知症になると預金や不動産の自由な処分が難しくなり、生前贈与や不動産の組み替えといった相続税対策が実行できなくなるため、「今の判断能力があるうちに動く」ことが必須です。
- 応急対策の中心は、「預金の名義と口座構成の見直し」「遺言書の作成」「任意後見契約・家族信託などによる将来の管理権限の委任」を組み合わせて整えることです。
- 一言で言うと、「今日から3か月以内にやる応急処置」と「1年以内に整える長期準備」に分けて優先順位をつけることが、相続税の生前対策と認知症対策の現実的な進め方です。
今日のおさらい:要点3つ
- 認知症になった後からは、新しい相続税対策はほぼ打てない。判断能力があるうちに動くことが、将来の選択肢を広げる唯一の方法です。
- 口座・不動産・遺言・将来の代理権を、判断能力が十分なうちに整える。特に資産の「見える化」と「誰に任せるか」の決定が、家族の混乱を防ぐ鍵になります。
- 「すぐやる応急対策」と「1年以内に整える準備」に分けて進める。完璧を目指すより、まず一歩を踏み出すことが最も重要です。
この記事の結論
認知症になる前の相続税対策の結論は、「判断能力がある今のうちに、最低限の応急対策(口座・遺言・代理権)をまとめて済ませておくべき」です。
応急対策の柱は、「資産の見える化」「遺言書の作成」「将来の管理権限(任意後見・家族信託など)の準備」「生前贈与・保険などの基本的な相続税対策の骨格づくり」です。
結論として、相続税の生前対策と認知症対策では、「完璧な節税」よりも「認知症後に資産が凍結しない状態」と「家族が困らない最低限の仕組み」を優先してつくることが、最も重要な応急対応になります。
認知症になると何ができなくなる?相続税の生前対策としてのリスク把握
結論として、認知症になると「相続税対策の多くが実行不能になる」ため、その前に対策を始めるかどうかで将来の選択肢が大きく変わります。
一言で言うと「口座・不動産・贈与が動かなくなる」
認知症などにより判断能力が低下すると、銀行は本人意思の確認が難しいとして預金の大口引き出しや解約に応じなくなることが多くなります。
不動産の売買や贈与、担保設定などの法律行為も、「本人が契約内容を理解していない」と判断されると無効となるリスクがあり、実務上は手続きがほぼ不可能になります。
相続税対策の王道である「生前贈与」「不動産の組み替え」「生命保険の見直し」などは、いずれも本人の判断能力が前提のため、一言で言うと「認知症になってからでは遅い」と言わざるを得ません。
具体的に、認知症後にできなくなる主な行為は以下の通りです。
- 預貯金の大口引き出し・解約・名義変更
- 不動産の売却・贈与・賃貸借契約の締結
- 生命保険の契約変更・解約・受取人変更
- 株式・投資信託などの売買・名義変更
- 新たな借入や連帯保証
- 遺言書の作成・変更
成年後見制度だけでは相続税対策が進まない理由
判断能力が低下した後の制度として「成年後見制度」がありますが、これはあくまで本人の財産を保護するための仕組みであり、「積極的な相続税対策」には向いていません。
後見人は、裁判所の監督のもとで本人の財産を管理しますが、本人の生活や療養看護に必要な範囲を超えた贈与や投資、不動産の大規模な組み替えなどには通常慎重であり、「節税目的の行為」は原則認められにくい運用です。
そのため、「認知症になったら後見人に任せれば相続税対策をしてくれる」という考え方は危険であり、やはり認知症になる前にできることを進めておく必要があります。
成年後見制度の主な制約は以下の通りです。
- 本人の財産を「守る」ことが目的であり、「減らす」行為(贈与など)は原則不可
- 後見人の報酬が毎月発生し、本人が亡くなるまで続く
- 家庭裁判所への定期報告が必要で、手続きが煩雑
- 親族が後見人になれないケースも多い
認知症リスクが高くなる年代と目安
統計的には、高齢になるほど認知症の有病率は上昇し、特に80代以降で大きく増えるとされています。
65歳以上の認知症有病率の目安は以下の通りです。
- 65〜69歳:約2〜3%
- 70〜74歳:約4〜6%
- 75〜79歳:約10〜13%
- 80〜84歳:約20〜25%
- 85歳以上:約40〜60%
一方で、相続税対策は「早く始めるほど選択肢が多く、贈与などの時間を味方にできる」性質があるため、「相続税が気になり始めたタイミング」が、認知症対策としてもベストなスタート時期と言えます。
認知症になる前に何から始める?応急対策の優先順位
結論として、相続税の生前対策と認知症対策の応急対策は、「資産の見える化→遺言→代理権の準備→最低限の相続税対策」という順番で進めると効率的です。
一言で言うと「まず一覧表、その次に遺言と代理権」
初心者がまず押さえるべき応急ステップは次の通りです。
- 資産と負債の一覧(財産目録)をつくる
- 遺言書を1本作る(後で書き直す前提でOK)
- 将来の財産管理を誰に任せるか決め、任意後見や家族信託を検討
- 相続税がかかりそうかどうかの試算をし、最低限の生前対策を決める
ステップ1:資産・負債の「見える化」
一言で言うと、「何がどこにどれだけあるのか」を家族が把握できる状態にすることが、すべての出発点です。
- 預貯金:金融機関名・支店・口座種別・残高の目安
- 不動産:所在地・地番・名義・用途(自宅・賃貸など)
- 有価証券:証券会社名・銘柄・評価額の目安
- 生命保険:保険会社・契約者・被保険者・受取人・保険金額
- 負債:住宅ローン・借入金・連帯保証など
- その他:貴金属・骨董品・ゴルフ会員権・暗号資産など
この一覧があるだけで、将来ご家族が相続税の申告や対策を検討する際の負担が大きく減り、「どこに何があるか分からず凍結してしまう」リスクを大幅に下げられます。
財産目録は、Excelや紙のノートなど形式は問いませんが、保管場所を家族に伝えておくことが重要です。また、年1回程度の更新を習慣にしておくと、常に最新の状態を維持できます。
ステップ2:遺言書で「誰に何を渡すか」を決めておく
遺言書は、認知症になる前に必ず作っておきたい応急対策の一つです。
遺言書がないと、認知症後に家族が遺産分割で揉めやすくなり、その結果、不動産を売却して納税資金を作ることなどが困難になるケースもあります。
一言で言うと、「完璧な内容でなくても良いので、まずは一本、自己の意思を形にしておく」ことが、相続税の生前対策と認知症対策の現実的な一歩です。
遺言書の種類と特徴は以下の通りです。
- 自筆証書遺言:自分で書く。費用は安いが、形式不備で無効になるリスクあり。法務局での保管制度を利用すると安全性が高まる。
- 公正証書遺言:公証人が作成。費用はかかるが、形式不備のリスクがなく、紛失・改ざんの心配もない。認知症対策としては最も推奨される。
ステップ3:将来の管理権限(任意後見・家族信託など)を検討
認知症後の財産管理の仕組みとしては、任意後見契約や家族信託が代表的です。
任意後見契約
本人が元気なうちに、将来の財産管理を任せたい人(任意後見人)と契約を交わし、認知症になったときに後見をスタートさせる仕組みです。
- メリット:自分で後見人を選べる、全財産を包括的に管理できる
- デメリット:認知症発症後しか効力が発生しない、裁判所の監督がある
家族信託
不動産や預金などを「信託財産」として家族(受託者)に管理を託し、本人が判断能力を失っても契約に基づき運用を続けられる仕組みです。
- メリット:認知症発症前から効力が発生、柔軟な資産運用が可能、裁判所の関与なし
- デメリット:設計が複雑で専門家の関与が必要、信託できる財産に制限がある場合も
どちらも、「認知症後も資産を動かせるようにする器」として機能し、相続税対策(不動産の管理・売却・継続的な贈与など)を継続しやすくする効果があります。
ステップ4:相続税の試算と最低限の生前対策
相続税がかかるかどうかは、「基礎控除額」との比較で判断します。
相続税の基礎控除額 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
例えば、配偶者と子ども2人が相続人の場合、基礎控除額は4,800万円となり、遺産総額がこれを超えると相続税が発生します。
相続税がかかりそうな場合の基本的な生前対策としては、以下のようなものがあります。
- 暦年贈与:年間110万円までの非課税枠を活用した贈与
- 生命保険の活用:「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠
- 不動産の評価減:小規模宅地等の特例の活用
- 教育資金・結婚子育て資金の一括贈与
これらの対策は、判断能力があるうちにしか実行できないため、早めの検討が重要です。
よくある質問
Q1:認知症になってから相続税対策を始めても間に合いますか?
A1:本人に判断能力がないと生前贈与や不動産売却など多くの対策ができず、成年後見制度も節税目的には使いにくいため、実質的には「間に合わない」場面が多いです。
Q2:認知症になる前に最低限やっておくべきことは何ですか?
A2:資産の一覧作成、遺言書作成、将来の財産管理を任せる人の決定(任意後見・家族信託の検討)、相続税がかかるかどうかの試算が最低ラインです。
Q3:任意後見と家族信託はどちらが良いですか?
A3:任意後見は全体の財産管理に向き、家族信託は不動産など特定資産の柔軟な管理に強みがあり、目的に応じて併用するケースもあります。
Q4:認知症対策として生前贈与は有効ですか?
A4:判断能力があるうちに計画的に行えば、将来の相続財産を減らす効果がありますが、贈与税や生活資金とのバランスを専門家と確認する必要があります。
Q5:認知症になる前に相続税の試算は必ず必要ですか?
A5:相続税がかかるかどうかで打つべき対策が大きく変わるため、一度試算しておくことで、過不足のない生前対策を選びやすくなります。
Q6:遺言書だけ作っておけば十分でしょうか?
A6:遺言書は重要ですが、認知症後の資産管理(口座・不動産)までカバーできないため、任意後見や家族信託などの仕組みも併せて検討するのが安全です。
Q7:いつごろから認知症リスクを意識した相続税対策を始めるべきですか?
A7:相続税が気になり始めた段階、もしくは70歳前後を一つの目安として、できるだけ早く動き出すことが推奨されています。
Q8:家族信託と任意後見契約は併用できますか?
A8:併用可能です。家族信託で特定の資産(不動産など)を管理し、任意後見でそれ以外の財産や身上監護をカバーするという組み合わせが実務上よく使われます。
Q9:認知症対策の相談は誰にすれば良いですか?
A9:相続税対策は税理士、遺言書や家族信託は司法書士や弁護士、全体の設計は相続専門のコンサルタントに相談するのが一般的です。複数の専門家が連携しているサービスを選ぶとスムーズです。
まとめ
認知症になると、生前贈与や不動産の組み替えといった多くの相続税対策が実行できなくなり、成年後見制度も節税目的には使いにくいため、「判断能力がある今」が対策のラストチャンスになりやすいです。
相続税の生前対策と認知症対策の応急対策は、「資産の見える化」「遺言書作成」「任意後見・家族信託など将来の管理権限の準備」「相続税の試算と最低限の生前対策」を、優先順位をつけて短期間で整えることです。
結論として、「認知症になる前に始める相続税の生前対策」は、完璧な節税を目指すよりも、資産凍結と家族の混乱を防ぐための応急対策と準備を、今すぐ一歩でも進めることが何より重要です。
まずは財産目録の作成から始め、できれば3か月以内に遺言書を、1年以内に任意後見や家族信託の検討を完了させることを目標にしてみてください。









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