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相続税の生前対策「節税のやりすぎ」は危険!デメリットと注意点を徹底解説
税金を減らすことだけを優先すると、かえって損をする可能性があります
相続税の生前対策で最も危険なのは、「税金を減らすことだけ」を優先しすぎて、生活資金や家族関係、さらには税務調査での否認リスクまで抱えてしまう”節税のやりすぎ”です。
「できるだけ多くの財産を次の世代に残したい」という気持ちは自然なものですが、その思いが強すぎるあまり、無理な節税スキームに手を出してしまうケースが後を絶ちません。
結論として、相続税の生前対策・節税では、「法の趣旨から外れた過度な節税スキーム」と「自分の生活や相続人の将来を犠牲にする無理な投資・贈与」を避け、適切な範囲でバランスよく対策を行うことが何より重要です。
節税のやりすぎによるデメリットと注意点を事前に確認
節税は合法的な税負担の軽減ですが、行き過ぎた節税になると「否認されて結局税負担が増える」「空室だらけの不動産だけが残る」「家族が割を食う」といった深刻な副作用が現れます。
近年、相続税の基礎控除額が引き下げられたことで、以前よりも多くの方が相続税の対象となるようになりました。そのため、「相続税対策」という言葉がより身近になり、さまざまな節税商品やスキームが市場に出回っています。しかし、その中には「節税効果」ばかりが強調され、リスクについては十分に説明されていないものも少なくありません。
一言で言うと、「とにかく相続税を減らしたい」という焦りから、短期間で大きな借入と不動産購入をしたり、形式だけの贈与を重ねたりすることが、相続税の生前対策・節税の”やりすぎ”にあたる危険ゾーンです。
この記事のポイント
- 節税のやりすぎで最も大きいデメリットは、「税務調査で否認され、本来の相続税に加えて加算税・延滞税まで課されるリスクが急激に高まる」ことです。
- 不動産を使った過度な節税や、形式だけの生前贈与・孫養子の乱用などは、「租税回避」と判断されると、最高裁判決を背景に通達を超えた課税が行われるケースも出ています。
- 一言で言うと、「相続税を減らすこと」よりも「家族の生活と資産全体を守ること」を優先し、行き過ぎた節税スキームに飛びつかないことが、相続税の生前対策・節税の最も大事なポイントです。
今日のおさらい:要点3つ
- “やりすぎ節税”は、否認・加算税・家族トラブルという大きな副作用を生む。税務署から指摘を受けた場合、本来の税額以上の負担を強いられることになりかねません。特に悪質と判断された場合は重加算税が課され、最大で本税の40%もの追加負担が発生する可能性があります。
- 駆け込み不動産購入や形式的な贈与・孫養子の乱用は、特にリスクが高い。近年の最高裁判決により、こうしたスキームへの税務当局の目は一段と厳しくなっています。「合法だから大丈夫」という考えは通用しなくなりつつあり、「なぜその対策を行ったのか」という動機や経緯まで問われる時代になっています。
- 「節税・生活・公平さ」のバランスをとることが、最善の相続税対策。目先の税金だけでなく、家族全体の将来を見据えた計画が求められます。節税によって得られる金額と、それに伴うリスク・手間・家族への影響を天秤にかけ、総合的に判断することが大切です。
この記事の結論(即答サマリー)
- 相続税の生前対策・節税のやりすぎによる最大のデメリットは、「税務調査で否認され、本税に加えて重いペナルティ税まで支払うことになり、結果として節税どころか損をしてしまう」点です。
- とくに、不動産を使った短期の大規模節税スキームや、形式だけの生前贈与・孫養子の乱用といった”スキーム頼み”は、最高裁判決以降、租税回避として否認されるリスクが高まっています。
- 結論として、相続税の節税は「やれるだけやる」ものではなく、「生活・資産・家族関係を損なわない範囲で、法の趣旨に沿った対策を淡々と積み重ねる」ことが、最も安全で結果的に得をする生前対策です。
節税のやりすぎとは?どこから危険ゾーンになるのか
結論として、「節税のやりすぎ」とは、法が想定する範囲を超えて税負担だけを不自然にゼロに近づけようとする行為や、生活・資産全体のバランスを無視して税金だけを見て判断する行為を指します。
一言で言うと「税金だけを見て判断する状態」
弁護士・税理士の解説では、次のような特徴が”やりすぎ相続税対策”に共通していると指摘されています。
- 高齢になってから短期間で多額の借入を行い、一気に高額不動産を購入して評価差だけで相続税をゼロ近くまで下げる。
- 相続開始直前に、相続人ではない孫養子を複数増やして基礎控除や税率人数を不自然に膨らませる。
- 形式だけの生前贈与(贈与契約書なし、通帳・印鑑は親が管理)を繰り返し、「名義預金」として否認される余地を自ら作ってしまう。
これらは一見「合法的な節税テクニック」に見えますが、最高裁判決や通達運用の変化により、租税回避として否認されるケースが現実に出ています。
「合法」と「認められる」は違う
重要なのは、「法律で禁止されていない=税務署に認められる」ではないという点です。形式的には法律に違反していなくても、その行為が「租税回避」と判断されれば、税務当局は通達を超えた課税を行うことができます。
特に令和4年の最高裁判決以降、「節税目的が明白な行為」に対する税務当局の姿勢は厳格化しています。この判決では、評価通達に基づく申告であっても、「租税負担の公平を著しく害する」場合には、別の評価方法(鑑定評価など)を用いることが認められました。
典型的な「やりすぎ節税」の事例とデメリット
結論として、「やりすぎ節税」のデメリットは大きく分けて、①税務否認リスク、②資産運用・キャッシュフロー悪化、③家族トラブルの3つに整理できます。
事例① 大量借入+不動産購入で相続税ゼロ → 否認されたケース
最高裁まで争われた事案では、高齢の親が約14億円の借入をして賃貸不動産2棟を購入し、時価と相続税評価額の大きな差を利用して相続税をほぼゼロにするスキームが問題になりました。
- 不動産購入価格は約13億8,700万円、相続税評価額は約3億3,000万円とされ、評価と時価の差が10億円以上もあった。
- 相続人は路線価などに基づき評価通達どおり申告していましたが、「租税負担の公平を著しく害する」として税務署が鑑定評価に基づき更正処分を行った。
- 裁判所は、「近い将来の相続を見込み、節税目的で行われた行為」「購入後すぐの売却予定」などを理由に、”やりすぎ相続税対策”として否認しました。
一言で言うと、「本に書いてある通りだから大丈夫」と思っても、規模・タイミング・意図によっては否認対象になるということです。
この事例から学ぶべきポイント
この判決で特に注目すべきは、「購入の経緯」「購入者の年齢・健康状態」「購入後の利用予定」といった背景事情が重視された点です。単に「不動産を買えば節税になる」という単純な話ではなく、その行為全体を見て「租税回避目的が明白かどうか」が判断されます。
事例② アパート建築のやりすぎで家族が苦しむケース
不動産投資を利用した相続税対策では、節税効果よりも「赤字物件を抱えて相続人が苦しむ」結果になった事例も多数報告されています。
- 地方で相続税対策のアパートが供給過剰となり、空室率が高くなって家賃収入がローン返済と修繕費を下回る状況に陥った。
- 相続人は、「相続税は減ったが、毎月のキャッシュフローマイナス・将来の大規模修繕」という重荷を長期で背負うことになった。
つまり、「節税したつもりが、実は資産を減らしていただけ」という結果も起こり得るのです。
不動産投資の落とし穴
相続税対策としての不動産投資で見落とされがちなのが、以下のようなコストやリスクです。
- 空室リスク:入居者が見つからなければ家賃収入はゼロ
- 修繕費用:築年数が経過するほど大規模修繕が必要に
- 管理費用:管理会社への委託費、固定資産税、保険料など
- 金利変動リスク:変動金利の場合、金利上昇で返済額が増加
- 流動性リスク:売りたいときにすぐ売れない、希望価格で売れない
節税効果だけを見て投資判断をすると、これらのリスクを過小評価してしまいがちです。「相続税が○○円減る」という数字だけでなく、「30年後にこの物件はどうなっているか」まで考える必要があります。
事例③ 孫養子や形式的贈与の乱用による否認
- 孫養子を複数取ることで基礎控除や税率人数を増やすスキームについて、「孫養子1人まで」といった上限や、租税回避の観点から制限があることが指摘されています。
- 暦年贈与の非課税枠を利用したつもりでも、贈与契約書や通帳管理が不十分で「贈与否認→名義預金」とされる失敗例も多く報告されています。
名義預金と判断されるパターン
以下のような状況では、「贈与」ではなく「名義預金」と判断される可能性が高くなります。
- 通帳や印鑑を贈与者(親など)が管理している
- 受贈者(子や孫)が口座の存在を知らない
- 贈与契約書が作成されていない
- 受贈者が贈与された資金を自由に使えない状態にある
- 毎年同じ金額を同じ時期に贈与している(定期贈与とみなされるリスク)
名義預金と判断されると、その預金は相続財産に含められ、相続税の課税対象となります。さらに、過少申告加算税や延滞税が課される可能性もあります。
相続税の生前対策・節税で「やりすぎ」を避けるための実務的な考え方
結論として、節税のやりすぎを防ぐために最も大事なのは、「税金だけ」でなく、「家族の生活」「資産全体の安全性」「法の趣旨」の3つを同時に見る視点を持つことです。
一言で言うと「節税・生活・公平さのバランス」
税理士や専門家のコラムでは、次のようなポイントが強調されています。
- 節税効果ばかり強調する商品やスキームには慎重になる。
- 「節税効果>リスク・コスト・家族の負担」かどうかを数値とシミュレーションで確認する。
- 制度の趣旨(配偶者控除・小規模宅地・養子縁組など)から明らかに外れた使い方は避ける。
また、税務調査や裁判例からは、「駆け込み」「短期間」「極端な評価差」「節税目的が明白」といった要素が重なるほど、租税回避として否認されやすいことが読み取れます。
安全な節税対策のチェックリスト
以下の項目に当てはまる対策は、比較的安全と考えられます。
- 十分な時間をかけて段階的に行っている
- 節税以外の合理的な目的・理由がある
- 自分の生活資金を圧迫しない範囲で行っている
- 家族全員が内容を理解し、納得している
- 専門家(税理士・弁護士)に相談した上で実行している
- 書類や記録がきちんと整備されている
逆に、「短期間で」「大規模に」「節税目的だけで」「専門家に相談せずに」行う対策は、リスクが高いと言えます。
専門家選びの重要性
相続税対策を行う際には、信頼できる専門家に相談することが不可欠です。ただし、専門家の中にも「節税効果」ばかりを強調し、リスクについて十分に説明しない人もいます。
良い専門家の特徴としては、以下のような点が挙げられます。
- メリットだけでなくデメリットやリスクも説明してくれる
- 「絶対に大丈夫」とは言わない
- 家族の状況や希望をしっかり聞いてくれる
- 複数の選択肢を提示してくれる
- 税務調査での否認リスクについても言及してくれる
「この方法なら必ず節税できます」「皆さんやっていますから大丈夫です」といった説明だけで終わる専門家には注意が必要です。
よくある質問
Q1. 節税のやりすぎで一番怖いのは何ですか?
税務調査で否認され、本来の相続税に加え加算税・延滞税まで負担し、結果として節税どころか大きな損をすることです。特に悪質と判断された場合は重加算税(最大40%)が課される可能性もあり、精神的な負担も大きくなります。
Q2. 不動産を使った相続税節税はもう危ないのでしょうか?
通常の範囲なら有効ですが、高齢者による短期の大規模借入+高額不動産購入など”やりすぎスキーム”は裁判例を背景に否認リスクが高まっています。不動産を活用した節税自体が否定されているわけではなく、「程度」と「やり方」が問題になります。長期的な視点で、収益性も考慮した上で行う不動産投資であれば、引き続き有効な対策となり得ます。
Q3. 生前贈与もやりすぎると問題になりますか?
形式だけの贈与や、名義預金と判断されかねないやり方は否認される可能性があり、契約書・通帳管理・説明ストーリーを備えた実質のある贈与が必要です。また、相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算される制度改正も行われており、早めに計画的に行うことが重要です。
Q4. 孫養子を増やせば節税になると聞きましたが本当ですか?
基礎控除や税率人数には一定の節税効果がありますが、孫養子の人数には制限や運用上の注意点があり、行き過ぎると租税回避とみなされるリスクがあります。税法上、相続税の計算において法定相続人に含められる養子の数は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までと制限されています。
Q5. どの程度までなら節税として安全なのでしょうか?
明確な線引きはありませんが、法の趣旨に沿った通常の対策(生前贈与・保険・小規模宅地など)を無理のない規模で行う範囲にとどめるのが現実的とされています。目安としては、「この対策を税務署に説明したとき、納得してもらえるか」という視点で考えると良いでしょう。
Q6. 節税で失敗したくない場合、どうすれば良いですか?
自己流でスキームに飛びつかず、複数の専門家の意見を聞き、「節税効果・リスク・家族の希望」を並べて比較検討することが重要です。また、一つの対策に集中するのではなく、複数の対策を組み合わせてリスクを分散させることも有効です。
Q7. 脱税との違いはどこにありますか?
節税は法律の範囲内で税負担を軽減する行為ですが、事実を隠したり仮装・隠蔽した場合は脱税となり、重加算税や場合によっては懲役刑の対象になります。一方、「租税回避」は脱税ほど悪質ではないものの、法の趣旨に反する形で税負担を免れようとする行為であり、税務当局から否認される可能性があります。
Q8. 税務調査はどのくらいの確率で来るのですか?
相続税の税務調査は、申告件数の約20%程度に対して行われているとされています。特に、相続財産が大きい場合や、不動産を多く保有している場合、過去に贈与の申告がある場合などは、調査対象になりやすい傾向があります。
Q9. 否認された場合、どのようなペナルティがありますか?
否認された場合、本来納めるべきだった相続税に加えて、過少申告加算税(10〜15%)や延滞税(年利約2.4〜8.7%)が課されます。さらに、仮装・隠蔽があったと判断された場合は重加算税(35〜40%)が課される可能性もあります。
まとめ
- 節税のやりすぎによるデメリットは、「税務否認による追徴課税」「空室だらけの不動産や過大な借金」「家族への重い負担」として、節税効果をはるかに上回るダメージとなって返ってくる点にあります。
- 特に、高齢期の大規模不動産投資や、形式的な生前贈与・孫養子の乱用などは、最高裁判決を背景に租税回避として否認される可能性が高く、慎重な検討が求められます。
- 結論として、相続税の生前対策・節税は、「やれるところまでやる」のではなく、「法の趣旨・家族の生活・資産全体の安全性」を踏まえた”ちょうどいい節税”を目指し、行き過ぎたスキームを避けることが最善の選択です。
相続税対策は、「いかに税金を減らすか」ではなく、「いかに家族の幸せを守るか」という視点で考えることが大切です。税金を減らすことに躍起になるあまり、家族関係が悪化したり、相続人が重い負担を背負うことになっては本末転倒です。
専門家の力を借りながら、長期的な視点で、家族全員が納得できる対策を進めていきましょう。









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