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相続税の申告は自分でどこまでできる?限界ラインとリスクの特徴を解説
相続税の申告を自分で行う場合の結論は、「法律上は自分で申告しても問題ないものの、評価・特例・税務調査リスクを踏まえると現実的な限界は低く、多くのケースで税理士依頼の方が合理的」ということです。「相続税は自分で”できる”が、自分で”やるべき”ケースはかなり限られる」というのが実務上の見解です。
【この記事のポイント】
- 相続税申告は申告納税方式のため、制度上は相続人自身が自分で申告しても構いませんが、専門家の解説では「簡単なケース以外はデメリットが大きい」とされており、限界が明確に存在します。
- 自分で申告する際の限界は「相続財産の種類が複雑になった瞬間」「特例・控除を積極的に使いたいタイミング」で訪れ、そこで無理をすると過大な納税や税務調査、ペナルティリスクが一気に高まります。
- 自分で申告する場合の主なリスクは、相続財産の申告漏れ、土地評価や小規模宅地等の特例のミス、税務調査の選定リスク、時間・手間・心理的負担などであり、これらは税理士報酬を上回る損失につながる可能性があります。
今日のおさらい:要点3つ
- 相続税の申告は自分でできるものの、多くの税理士事務所は「財産が単純で少額なケース以外は推奨しない」としており、制度上の自由と実務上の限界にはギャップがあります。
- 「預貯金のみ・相続人1人・特例ほぼ無し」くらいが自分で申告する場合の安全圏であり、土地・賃貸不動産・非上場株式・名義預金・生前贈与などが絡むと、自力申告はリスクが急増します。
- 相続税申告の可否判断では、「どこからが自分でやるには難しすぎるのか」「どんなリスクが潜んでいるのか」を限界ラインとともに把握し、不安を感じる段階で相続税専門税理士に相談することが大切です。
この記事の結論
相続税の申告は自分で行うこともできますが、専門家の実務感覚では「ごく単純なケースを除き、自分で申告するのはデメリットとリスクが大きい」と評価されています。
自分で申告する場合の限界は、相続財産が預貯金中心で、土地や賃貸不動産・非上場株式がなく、相続人も少数で、特例・控除をほとんど使わないレベルと考えるのが安全です。
主なリスクは、相続財産の申告漏れ、土地評価の誤り、本来使えた特例の使い漏れ、税務調査での指摘と追徴課税、平日対応などの時間的負担であり、これらは税理士報酬以上の損失につながる可能性があります。
「相続税を自分で申告する最大のデメリットは、申告が終わるまで”どれだけ損をしているか分からない”こと」です。
相続税の申告を自分で行うか迷う場合は、まず限界ラインとリスクの特徴をチェックし、グレーゾーンに入ると感じた時点で、相続税専門の税理士にシミュレーションを依頼するのが合理的です。
相続税申告を自分で行う場合の「できる」と「限界」の境目はどこか?
自分で相続税申告を行うこと自体は法律上問題ありませんが、「どこまで自分でやるのが現実的か」という限界は、財産内容と税務の複雑さによって明確に分かれます。「相続税法の理解」よりも「評価・特例・税務調査を含めた総合判断」が要求される地点が、自分で申告する場合の限界ラインです。
制度上は「自分で申告OK」だが、現場では推奨度が低い理由
相続税は申告納税制度を採用しており、納税者が自ら税額を計算して申告する仕組みです。
制度面
税理士に依頼する義務はなく、税務署でも相続税の相談窓口が設けられ、自分で申告する前提の案内も行われています。
実務面
相続税専門の税理士法人では、「相続税申告を税理士に依頼する割合は約8〜9割」「自分での申告は可能だがデメリットが大きい」と明記しているところが多くあります。その背景として、「土地評価や特例の適用には高度な知識が必要」「申告内容にミスがあるとペナルティが発生する」という点が繰り返し指摘されています。
「制度上OK」と「実務上のおすすめ」は別物であることが、まず押さえるべきポイントです。
自分で申告しやすい範囲(限界ラインの”内側”)
複数の専門サイトは、自分で申告しやすいケースを共通の条件で整理しています。
財産の種類が単純
預貯金・上場株式・少額の生命保険など、評価がほぼ時価や残高証明で足りる資産が中心で、土地や賃貸不動産・非上場株式がないケース。
相続人と人間関係がシンプル
相続人が1人(配偶者のみなど)または少数で、遺産分割トラブルの可能性が低いケース。
遺産総額が比較的少ない
課税ラインを大きく超えない規模で、「細かい特例でギリギリまで攻める必要がない」くらいの遺産額の場合。
特例・控除をほとんど使わない
配偶者控除や小規模宅地等の特例を本格的に使わず、基礎控除とシンプルな控除だけで収まるケース。
このような条件が揃うとき、「自分で申告する」ことのリスクは相対的に低く、現実的な限界の内側と言えます。
自分で申告する限界を超えるサイン(ここからは税理士向き)
一方で、「ここから先は自分でやるには明らかに難しい」とされる条件も共通しています。
土地・建物がある、特に複数件ある
路線価・地積・形状・利用状況などを踏まえた評価計算が必要で、評価ミスによる過大納税・過少申告の両リスクが大きくなります。
賃貸不動産・非上場株式を保有
賃貸アパート・駐車場・テナントビルや、自社株などの評価は非常に複雑で、自分で正確に行うのは難易度が高いとされています。
名義預金・名義保険・生前贈与などが絡む
「本当は誰の財産か」という判断が必要な名義預金や、暦年贈与・相続時精算課税が混在する場合、課税関係の判断を誤るリスクが高いと指摘されています。
特例・控除をフル活用したい
小規模宅地等の特例、配偶者控除の最適配分、生命保険の非課税枠などを駆使して税額を抑えたい場合、自前の判断では節税機会を逃しやすくなります。
これらの条件が1つでも当てはまると、「自分で申告する場合の限界」を超えている可能性が高く、専門家への依頼に切り替えるサインと考えるべきです。
相続税申告を自分で行う場合に潜む主なリスクの特徴
自分で相続税申告を行うリスクは、「金額として見えやすいリスク」と「見えにくい精神的・時間的リスク」に分けて考えると整理しやすくなります。「税理士報酬は目に見えるコスト、自分で申告する場合のリスクは見えにくいコスト」です。
リスク1:相続財産の申告漏れ・評価ミスによる追徴課税
まず押さえるべきは、「財産の把握」と「評価」の難しさです。
財産の申告漏れ
実務では「亡くなった方の財産をすべて把握できているケースは意外と少ない」と指摘されており、特に遺言書がない場合、自分で調査した結果として一部財産を申告し忘れる例が少なくありません。名義預金・名義保険、生前贈与分の扱いも含め、「そもそも相続財産かどうか」の判断を誤るリスクがあります。
評価ミス
土地評価では、路線価の読み違い、間口・奥行・形状補正の適用ミス、貸家建付地の判断ミスなどにより、適正額から大きくズレる可能性があります。その結果、「本来より多く税金を払ってしまう」か「不足分が後から追徴される」かのどちらかのリスクが高まります。
このリスクは、「計算式は合っているのに前提の評価から間違っている」という形で潜む点が特徴です。
リスク2:本来使える特例・控除を使い損ねる
「知らない特例は、最初から存在しないのと同じ」になりがちです。
代表的な使い漏れ
- 小規模宅地等の特例(自宅や事業用・貸付用土地の大幅な評価減)
- 配偶者控除の最適な使い方(一次・二次相続をまたいだ設計)
- 生命保険金の非課税枠、葬式費用の控除など
なぜ起こるか
税務署の窓口相談では、「納税者に有利な節税アドバイスまでは期待できない」とする解説があり、あくまで”最低限ミスがない申告”を目指した案内にとどまる傾向があるとされています。
結果として、「法律上は使えたはずの特例に気づかないまま申告が完了し、その分多く税金を払ってしまう」ケースが少なくありません。
このリスクは、「税務調査で指摘されない=問題なし」ではなく、「静かに損をしている」という形で現れます。
リスク3:税務調査の選定リスク・ペナルティ
税務調査に関しても、自分で申告する場合特有のリスクがあります。
調査選定の背景
相続税申告書には税理士の署名欄があり、自分で申告したか税理士が関与したかは税務署側に一目で分かります。一部の税理士は、「自分での申告は計算ミスや判断ミスがあると見なされやすく、税務調査の対象に選ばれる可能性が高まる」と説明しています。
データ・実務感覚
ある事務所は、「平成29年時点で、申告書提出者の10人に1人程度が税務調査を受けており、自分での申告は特に選定されやすい」との解説を掲載しています。他方で、「セルフ申告だからといって自動的に調査確率が上がるわけではないが、漏れやミスを疑われる余地はある」という慎重な見解も示されています。
ペナルティ
過少申告や無申告が発覚すると、追徴税(過少申告加算税・重加算税)や延滞税が発生し、「節約した税理士報酬を上回る追加負担」になる場合があります。
このように、「税務調査の可能性+追加税+心理的負担」がセットでリスクとして存在します。
リスク4:時間・手間・精神的負担という”見えないコスト”
相続税申告を自分で行う場合、「平日の日中に何度も役所・金融機関・税務署に出向く」「慣れない計算に多くの時間を取られる」といった負担も無視できません。
時間的コスト
戸籍・住民票・残高証明書・登記事項証明書などの取得、財産調査、申告書作成、税務署とのやり取りなどで「何日も潰れる」との声が紹介されています。
精神的コスト
一度きりの相続税申告で慣れがなく、「本当にこれで合っているか」という不安を抱えながら作業すること自体が大きな負担になります。
「税理士報酬を節約する代わりに、自分の時間と心の余裕を支払っている」という構図になりやすいのが、自分で申告する場合の特徴です。
よくある質問
相続税申告を自分で行うことは法律的に問題ありませんか?
問題ありませんが、専門家は「簡単なケース以外はリスクが高く、慎重な判断が必要」と説明しており、制度上の可否と実務上の推奨度は異なります。
自分で申告できる限界ラインはどこですか?
預貯金中心で土地・賃貸不動産・非上場株式がなく、相続人が少なく、特例をほとんど使わない程度が目安で、それを超えると自力申告はリスクが高いとされています。
自分で申告すると税務調査に入りやすいですか?
自分で申告したかどうかは申告書で分かり、一部の税理士は「ミスを疑われやすく選定リスクが高まる」と解説していますが、一方で「確実に確率が上がるとは言えない」との見解もあります。
税務署に相談すれば、自分で申告しても安心ですか?
税務署は制度の説明や最低限の相談には応じますが、納税者に有利な節税アドバイスや評価の代行までは行わず、その結果として特例の使い漏れや過大申告が起こり得ると指摘されています。
自分で申告した場合に特に注意すべきポイントは何ですか?
全財産の洗い出し、土地・名義預金・生前贈与の扱い、小規模宅地等の特例の要件確認、申告期限の厳守、税務調査を想定した資料保存が重要です。
税理士に依頼する一番のメリットは何ですか?
土地評価や特例活用による節税、税務調査リスクの低減、時間・手間の大幅削減などにより、「税理士報酬以上に得をする可能性が高い」と説明されています。
e-Taxで相続税申告を自分で行うのはどうですか?
個人がe-Taxソフトで相続税申告を行うのは「難易度が高くデメリットが多いのでおすすめしない」との解説があり、電子申告であっても専門家への依頼が推奨されています。
名古屋のように不動産が多い地域では、自分での申告は危険ですか?
不動産比率が高い相続は評価・特例の影響が大きく、自力申告の評価ミスや税務調査リスクが増えるため、地域事情に詳しい相続税専門税理士への依頼が特に有効です。
自分で申告してから、後から税理士に修正を頼むことはできますか?
可能ですが、更正の請求期間や手続きに制約があり、「最初から専門家に依頼しておけば避けられた手間・リスク」が発生するため、事前相談の方が効率的です。
まとめ
相続税の申告を自分で行うことは制度上認められていますが、専門家の解説では「財産が単純で少額なケース以外は、デメリットとリスクが大きい」とされており、実務上の限界は意外と低いです。
自分で申告できる限界ラインは、預貯金中心・土地や賃貸不動産・非上場株式なし・相続人少数・特例ほぼ無しといった条件であり、それを超えると評価・特例・税務調査のリスクが急激に高まります。
主なリスクは、財産の申告漏れ、土地評価や特例適用のミス、本来使えた控除の使い損ね、税務調査での追徴課税、さらに多大な時間と精神的負担であり、結果として税理士報酬以上の損失を招くこともあります。
相続税を自分で申告する最大の問題は「申告が終わった後でしか、自分の選択がどれだけ不利だったか分からない」という点であり、不確実なリスクを抱えた選択になります。
相続税の申告を自分で行うか迷う場合は、まず自分のケースが「限界ラインの内側か外側か」を基準とリスクの特徴で確認し、少しでも不安や複雑さを感じる段階で、相続税専門の税理士に相談することが家族全体にとって最も合理的な判断です。









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