現金ではなく不動産を相続する場合、「相続登記」の手続きを行う必要があります。
登記申請は申請書と一緒に、登記が発生した理由と権利が誰に移ったかを証明する「登記原因証明情報」を添付しなければなりません。
また、登記原因証明情報は相続人がひとりではなく複数の場合、誰が相続したかの証明となる「遺産分割協議書」を添付します。
とはいえ、ケースによっては不要となることもあります。
この記事では、相続登記の際に遺産分割協議書が必要となるケースについて詳しく解説していきます。
目次
「相続登記で遺産分割協議書が必要な場合」
相続登記で遺産分割協議書が必要な場合とはどのようなものか解説します。
「法定相続分ではない相続登記」
法定相続分は民法(900条)により、被相続人と相続人の関係に応じて分配されるよう定められています。相続人が「配偶者」もしくは「子供」の場合、相続分は2分の1ずつになります。
ただし、法定相続分は目安でしかないため、絶対的な決まりではありません。つまり、法定相続分とは異なる割合での遺産分割も可能です。
独自の割合で遺産分割を行う場合、相続人同士で話し合いを行い、相続登記時に協議書が必須となります。
「遺言書がない」
遺言書が存在せず、相続人がひとりでないケースは、相続処理を行うためにも「遺産分割協議」が必要になります。
とはいえ、以下のケースでは必要ではありません。
1) 法定相続分で遺産分割するケース
2) 調停・審判を利用するケース
「相続登記で遺産分割協議書が不要な場合」
相続登記で遺産分割協議書が不要な場合とはどのようなものか解説します。
「遺言書がある」
遺言書がある場合、遺産分割を行う上で必要となる書類は「当該遺言書」のみになるため、遺産分割協議書は必要ありません。
ただし、公正証書遺言以外の方法を用いて遺言書を作成した場合、検認手続きを受けなければなりません。このとき、申請時に家庭裁判所が発行する「検認済証明書」を添付する必要があるので十分に注意しましょう。
「法定相続分での相続」
法定相続分での相続を行う場合、「遺言書」もしくは「遺産分割協議書」は不要です。
なお、法定相続分については以下の表をご覧下さい(民法900条各号)。
相続人が、被相続人の配偶者と子供(直系卑属)の場合 | 配偶者の相続分
1/2 |
子供(直系卑属)の相続分
1/2×(子供の人数) |
相続人が、被相続人の配偶者と親(直系尊属)の場合 | 配偶者の相続分
2/3 |
親(直系尊属)の相続分
1/3×(親の人数) |
相続人が、被相続人の配偶者と兄弟姉妹の場合 | 配偶者の相続分
3/4 |
兄弟姉妹の相続分
1/4×(兄弟姉妹の数) |
相続人が、子供・直系尊属・兄弟姉妹のいずれかで、複数人いる場合 | 各自の相続分は等しい割合
(ただし、父母のうちどちらか一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方とも同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1) |
「遺産分割調停・審判の利用」
遺産分割協議で解決に至らなかったものの、家庭裁判所の調停・審判による決定がある場合、遺産分割協議書は必要ありません。
「相続人が1人だけ」
相続人が1人しかいない場合、他の相続人と協議を行う必要がないため、遺産分割協議書は不要になります。
「相続登記のための遺産分割協議書の書き方と注意点」
相続登記のための遺産分割協議書の書き方と注意点について解説します。
「遺産分割協議書の雛形」
相続登記のための遺産分割協議書の雛形としては次のようなものになります。
「注意点」
遺産分割協議書を作成する際の注意点としては以下のとおりです。
1)協議は必ず相続人全員で行う(※1人でも欠けると協議は無効になる)
2)不動産は登記簿に明記されている内容を記載する
3)財産は具体的に記載する(内容を特定できるように)
4)協議書を作成した日付を明記する
5)記入に決まりはない(手書きでもよく、縦書き・横書きどちらでも可)
6)遺産分割協議者は協議書に実印を押印して印鑑証明書を添付する
7)遺産分割協議書が複数枚になる場合、用紙と用紙の間に契印(協議者全員分)を押す
8)協議書は後日のトラブルなどを防ぐため相続人全員分を作成して各自所有する
遺産分割協議書は真実であることの証明でもあり、相続人それぞれが内容に同意したことを確認するための証明でもあります。
また、後にトラブルへと発展しないための取り決めでもあるため、作成する際は十分に注意するようにしてください。
「作成が困難な場合は専門家に相談を」
相続登記における遺産分割協議書の作成はいろいろと注意しなければならない点があります。
確かな協議書を作成し、トラブルを防ぎたいのであれば専門家に相談するのも手です。