“家族に遺産を残さずに、NPO法人や公益法人に遺贈するケースや生前に寄付することを約束するケースなどがあります。アメリカなどの大富豪が生前にこれを行って、財産を有効に活用する姿が一般的です。日本でも近年今まで住んでいた町に数億円単位の寄付を行うケースが見られるなど、こうした動きは今後強まる可能性があります。ここで気になるのは遺贈などの際に発生するであろう相続税についてです。実は要件さえ満たしてしまえば特例によって非課税にしてくれます。
遺産を寄付するパターンとしては遺言書によって相続する先を決める遺贈と生前に相続先と契約をする死因贈与があります。また、被相続人から遺産を引き継いだ相続人が自らの意思で公益法人などに寄付することも可能です。ただ相続人が行う場合は相続税の申告期限内に済ませておくことや財産の明細書などを添付する必要があります。
公益法人などに寄付をして特例を受ける場合、財産が相続もしくは遺贈で取得したものや相続税の申告期限内に済ませておくことに加えて相続先が特定公益法人や自治体であることが条件です。実はふるさと納税もこれに該当します。自治体に対して行うものであり、相続によってもたらされた財産を自治体に渡すこともできます。遺産が社会に還元されることやこうした行為自体が納税と同じであるため、行為によって支払われた分に関してはそのまま相続財産から差し引かれることになっていきます。
ただ適用を受けていても除外を食らうこともあります。例えば2年以内にその団体が消滅する場合や公共の目的以外で使われた場合、そして相続人が相続先の団体と関係があって恩恵を受けている場合です。社会に還元されることが大前提であるため、社会に還元されないような使い方をすれば当然ながら特例は受けられません。むしろ悪質な税逃れと糾弾されてもおかしくありません。
実際に特例を受ける場合には相続税の申告期限内に決着をつけることが重要です。段取りを生前からつけていれば、家族から異論が出ることはありません。ところが急に遺言書でそうしたことが書かれていれば、遺贈に反対する家族がいてもおかしくないです。またボランティア団体やあまり喜ばしくない団体に遺産をわたすことに納得できない家族も出てきます。こうしたトラブルを抱えながら相続税の申告期限内に決着をつけることは実に大変です。もしこの特例を意識して動く場合には生前のうちから話をしておくことが必要です。”