相続に関する様々な行為は非常にデリケートなものが多く、被相続人の死去から相続税の納付までを行わなければならない10か月間は、様々な意味でストレスに溢れた期間だといえます。遺言書があって、その内容の通りに遺産分割が行われた場合は納付すべき相続税に関しては被相続人の遺志が反映されたものになるわけです。しかし、被相続人の思いが遺産相続に反映されたとしても遺産相続によってもたらされる相続税額は相続人の思いとは裏腹となるケースが出てくることも、また有り得るケースなのです。特定の相続人に全部の遺産を与えるというような偏った内容の遺言書がある場合は紛糾の種になり、相続人全員で遺言書の内容を覆すことを協議することも当然ながら出てきます。つまり遺言書と異なる遺産分割が行われるケースも、被相続人の遺志に反していても、あってしかるべき遺産の分割となりうるのです。この際の相続税法上の解釈はどのような解釈になるのでしょうか。遺言書によって財産を相続されるとされた受遺者にとっては遺言に記された内容の遺産を相続することは、新たな協議による相続が発生することになっても、遺言に記された相続の内容に関してはいったん相続を放棄したというように解されます。いったん相続を放棄したものを、相続人各位が改めて相続することになるということは受遺者が相続人に贈与があったと見做されかねませんが、相続税の解釈は違ってきます。贈与税は日本国内における税率の中で一番高い税金となり、遺言の内容を覆す内容の遺産分割を行い相続に関する税金を納付したうえ贈与税も課されたのでは不公平と言わざるを得ません。税法に於いては、このような場合の贈与税は課税されないと規定しており、被相続人の遺志に反するかたちで行われた遺産分割も有効となると解釈されているのです。被相続人の遺志に反したことを行おうという場合は、法的にどうなのかと戸惑う遺族も多いのではないかと思われ、こういった業務を整然と行うためには、その道のプロに相談することが第一です。税金にかかわることなので、税理士が適当ではないかと考えますが、弁護士であれば弁護士の資格は税理士の資格も兼ね備えていますから弁護士に相談すればこのようなケースはほぼ間違いなく対応してくれるケースと考えて間違いありません。また相続人が負担すべき税額に関しては後日トラブルが発生しないよう、税負担割合に関する擦り合わせは慎重に行っておいたほうが良いでしょう。