“医療法人に出資をすると、出資した割合に応じて医療法人の資産を払い戻すことができる法人があります。これを持ち分あり医療法人と称し、出資金のうち半分程度出していれば法人資産の半分の払い戻しを受けられます。持ち分はいわば財産権であり、相続でも持ち分を相続させられます。ところが持ち分の評価額が膨大であれば、現金で相続税の支払いをしないといけません。現金で用意するとなると払い戻しを要請してから準備することが必要となり、経営に支障が出てしまいます。ここで登場するのが税額控除の特例です。
条件としては相続税の申告期限までに認定医療法人にすることです。今後持ち分のない法人に移行することを計画してそれを厚生労働大臣に認可してもらうことで認めてもらえます。3年以内に移行計画を示すことや社員総会で議決すること、持ち分なしに変わって6年間は認定要件を維持することなどが条件です。また役員報酬を高額にしないことや自由診療が少ないことなども追加されて認定の要件はかなり厳しくなっています。これによって認定されれば相続人が相続税の申告期限までに持ち分を放棄すれば、放棄した分に関して税額控除の特例が受けられます。
持ち分のない法人に移行するまでに相続人が持ち分をすべて放棄した場合にはその間の納税は猶予されます。そして、完全に放棄した段階で免除されていきます。こうした特例は私的な財産をリリースする仕組みになっており、実際にその特例を利用する人はごくわずかとなっています。いずれは持ち分なしの医療法人に変わる必要があるものの、そのタイミングによっては相続の際にかなりの違いが生まれます。認定を受けて移行するまでの3年間に納税猶予のシステムを使って持ち分の放棄による贈与税の発生などに備えていきます。
この特例自体は時限的なものとなっており、平成26年度の税制改正から3年間の期間限定で当初は行われていました。そして2020年までの延長が決定した際に要件の変更などが行われています。持ち分ありのところがまだ過半数を占めており、完全に持ち分なしのところにするためには結構な時間がかかります。そのため今後も続くことが予想されるばかりか、さらに緩和させた形で行われる可能性もあります。また相続税の申告期限に話をつけるのは大変で、生前から話し合いを重ねた上で認定をもらって移行を進めていくことが無難です。税額控除を受けるためにもそれなりの準備が求められます。”