目次
相続税の登記に必要な戸籍謄本とは?準備のよくある質問
相続税と登記のどちらの手続きでも、「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本」と「相続人全員の現在の戸籍謄本」が基本セットで必要になります。
「誰が相続人かを証明するために、亡くなった方の人生の戸籍の履歴をすべてたどる」ことが求められる、というイメージで考えていただくのが確実です。
【この記事のポイント】
- 相続税・登記の必要書類である戸籍謄本の中心は「被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍一式」と「相続人全員の現在戸籍」の2種類
- 相続税申告では「全相続人が確認できる戸籍一式」か「法定相続情報一覧図の写し」のどちらかを提出すれば足りると国税庁が示している
- 令和6年3月からは戸籍の広域交付制度により、本籍地以外の市区町村でも「出生から死亡までの戸籍謄本」がまとめて請求できるようになった
今日のおさらい:要点3つ
- 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本は、「相続人を確定するために必須」の書類です。
- 相続税と登記の両方で、「被相続人の戸籍一式+相続人全員の戸籍」が必要になるため、一度にまとめて取得した方が効率的です。
- 取得は本籍地の市区町村役場または広域交付に対応した最寄りの役場で、「相続手続きに必要な出生から死亡まで」と伝えるのが初心者の近道です。
この記事の結論
相続税・登記の必要書類である戸籍謄本として準備すべきものは、「被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍・改製原戸籍を含む)」と「相続人全員の現在戸籍」の2セットです。
戸籍謄本準備のポイント
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 基本の考え方 | 「亡くなった方の人生の戸籍履歴」と「今の相続人の戸籍」がそろえば、相続税申告も相続登記も進められる |
| 最も大事なこと | まず死亡時の本籍地の役所で戸籍を取り、その役所に「出生から死亡までの全戸籍が必要」と依頼して一括でたどってもらう |
| 提出書類の選択肢 | 国税庁は、相続税の申告で「全相続人が確認できる戸籍一式」か「法定相続情報一覧図の写し」のどちらかを提出書類として認めており、登記にも併用できる |
戸籍謄本はどこまで必要?
戸籍謄本は「亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの連続した戸籍」と「すべての相続人の現在の戸籍」が必要範囲です。
「過去の戸籍も含めて、相続人を漏れなく確認できるだけの分が必要」と覚えると分かりやすくなります。
なぜ「出生から死亡まで」の戸籍謄本が必要になるのか?
相続税・登記の必要書類である戸籍謄本で一番よく聞かれるのが、「どうして死亡時のものだけではダメなのか」という質問です。結論は「相続人を確定するため」です。
出生から死亡までの戸籍が必要な理由
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 相続人の確定 | 相続手続きでは「亡くなった方の相続人を確定する必要があるため、婚姻・離婚・養子縁組・認知などの履歴を全期間分確認しなければならない」 |
| 履歴の確認 | 被相続人の人生の中で、子どもが生まれたり養子を迎えたり、逆に子どもが亡くなったりしているかどうかは、出生から死亡までの連続した戸籍を追わないと分からない |
このため、相続税の申告でも相続登記でも、「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍を含む)」が欠かせないと繰り返し案内されています。
相続税と登記で共通する戸籍謄本の範囲
「ほぼ同じものを使い回せます」。
相続税と登記で必要な戸籍謄本
| 手続き | 必要な戸籍謄本 |
|---|---|
| 相続登記 | 「被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍謄本」と「相続人全員の現在の戸籍謄本」 |
| 相続税申告 | 「被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本」または「法定相続情報一覧図の写し」 |
つまり、一度そろえた戸籍一式は、以下のような複数の手続で共通して必要になる「ベース書類」になります。
戸籍一式が必要な手続き
| 手続き | 用途 |
|---|---|
| 不動産の相続登記 | 不動産の名義変更 |
| 預貯金・証券・保険の名義変更 | 金融機関での手続き |
| 相続税の申告 | 税務署への申告 |
何通くらい用意すればよい?コピーで足りるケースは?
「戸籍原本は最小限+必要に応じてコピーで対応」が一般的です。
戸籍謄本の通数と原本・コピーの使い分け
| 書類 | 目安通数 | 備考 |
|---|---|---|
| 被相続人の出生〜死亡の戸籍謄本 | 原則1セット | 手続き先が原本返却に対応していない場合は追加取得が必要 |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 各1通 | 相続人の人数分 |
原本とコピーの使い分け
| 手続き | 原本・コピー |
|---|---|
| 相続税申告 | コピーでも可(法定相続情報一覧図の活用も可能) |
| 相続登記 | 原本提出(原本還付制度あり) |
| 金融機関 | 金融機関により異なる |
初心者がまず押さえるべき点は、「原本が必要な場面」と「コピーで足りる場面」を事前に確認し、必要に応じて法定相続情報一覧図を使うと原本の追加取得を減らせる、という点です。
戸籍謄本の取り方(具体的な手順とコツ)
「死亡時の本籍地の役所からスタートし、出生までさかのぼる」ことが最もスムーズな取得方法です。
「まず今の戸籍、その後に昔の戸籍」が基本の流れになります。
ステップ1:死亡時の戸籍謄本を本籍地で取る
最も大事なのは、「住所地ではなく本籍地の役所から始める」ことです。
死亡時の戸籍謄本取得のポイント
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 取得場所 | 被相続人の死亡時の本籍地の市区町村役場 |
| 本籍地が分からない場合 | 「本籍地の記載のある住民票」を住所地の役所で取得し、本籍地を確認する |
| 請求時のコツ | 「相続手続きのため、出生から死亡までの全ての戸籍が必要」と書いておくと、窓口側が過去の戸籍も含めて必要分を案内してくれる |
請求書には「相続手続きのため、出生から死亡までの全ての戸籍が必要」と書いておくと、窓口側が過去の戸籍も含めて必要分を案内してくれるので、初心者にはおすすめのやり方です。
ステップ2:除籍謄本・改製原戸籍までさかのぼる
「コンピュータ化前の古い戸籍も必要」です。
戸籍謄本の種類
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) | コンピュータ化された現在の戸籍 |
| 除籍謄本 | 婚姻・死亡・転籍などで全員が抜けた戸籍 |
| 改製原戸籍 | 法改正により様式が変更される前の古い戸籍 |
本籍地が変わっている場合や、戸籍の様式が改製されている場合、それぞれの時点の役所に遡って請求する必要がありますが、最初の役所で「出生までのすべてが必要」と書けば、必要な本籍地も教えてもらえることが多いです。
本籍地が複数ある場合の例
| 時期 | 本籍地 | 取得先 |
|---|---|---|
| 出生時 | A市 | A市役所 |
| 就職後 | B市 | B市役所 |
| 結婚後(死亡時) | C市 | C市役所 |
このように、A市・B市・C市の3か所から順に戸籍を集めて、つながりを確認していくことになります。
ステップ3:広域交付制度・郵送・代理取得の活用
初心者がまず押さえるべき点は、「今は本籍地以外でも取得できる場合がある」という制度改正です。
戸籍謄本の取得方法
| 取得方法 | 内容 |
|---|---|
| 広域交付制度 | 令和6年3月1日から、本籍地が別の自治体にあっても、最寄りの市区町村役場で被相続人の戸籍謄本等を取得できる(直系親族など一定の条件あり) |
| 郵送請求 | 本籍地の役所に対して郵送で請求可能。請求書・本人確認書類・手数料・返信用封筒などが必要 |
| 代理取得 | 直系親族が代理で取得するか、第三者が委任状を添えて代理取得することも可能 |
戸籍謄本取得の費用と期間
戸籍謄本取得の費用目安
| 書類 | 手数料(1通あたり) |
|---|---|
| 戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) | 450円 |
| 除籍謄本 | 750円 |
| 改製原戸籍 | 750円 |
戸籍謄本取得の期間目安
| 取得方法 | 期間目安 |
|---|---|
| 窓口請求 | 即日〜数日 |
| 郵送請求 | 1〜2週間程度 |
| 広域交付 | 即日〜数日(自治体による) |
法定相続情報一覧図の活用
法定相続情報一覧図とは
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 概要 | 相続関係を一覧にした図で、法務局が認証したもの |
| メリット | 戸籍謄本一式の代わりに使用でき、何通でも無料で発行可能 |
| 取得場所 | 法務局 |
| 必要書類 | 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式、相続人全員の現在戸籍など |
法定相続情報一覧図を活用するメリット
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 複数手続きへの対応 | 相続税申告、相続登記、金融機関での手続きなど複数の手続きに使い回せる |
| 原本取得の削減 | 戸籍謄本原本を複数セット取得する必要がなくなる |
| 無料発行 | 何通でも無料で発行してもらえる |
よくある質問(戸籍謄本準備編)
Q1. 相続税と相続登記で必要な戸籍謄本は同じですか?
A. 基本的に同じで、被相続人の出生から死亡までの戸籍一式と、相続人全員の現在の戸籍謄本が両方で使われます。
Q2. 「出生から死亡までの戸籍謄本」とは具体的に何を指しますか?
A. 被相続人の全期間をカバーする戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍の連続したセットを意味します。
Q3. なぜ死亡時の戸籍謄本だけではダメなのですか?
A. 婚姻・離婚・養子縁組・子の出生や死亡などの全履歴を確認しないと、法定相続人を正しく確定できないためです。
Q4. 戸籍謄本はどこで取得できますか?
A. 原則は本籍地の市区町村役場ですが、広域交付制度により一定の条件下で最寄りの役場でも取得できるようになりました。
Q5. 相続税申告では戸籍謄本を原本で出す必要がありますか?
A. 国税庁は「相続人を明らかにする戸籍の謄本」または「法定相続情報一覧図の写し」の添付を求めており、多くのケースでコピー提出が可能です。
Q6. 相続人の戸籍謄本も必要ですか?
A. 全相続人の現在戸籍謄本が必要であり、相続人であることの証明に使われます。
Q7. 養子や先に亡くなった子がいる場合、追加で何が必要ですか?
A. 被相続人に養子がいる場合は養子の戸籍、先に亡くなった子の系統はその子の出生〜死亡の戸籍など、代襲相続人を確認できる戸籍が必要です。
Q8. 戸籍謄本の有効期限はありますか?
A. 法律上の有効期限はありませんが、相続登記や相続税申告では「相続開始後に取得したもの」「取得から3か月以内のもの」を求める実務慣行があります。
Q9. 戸籍謄本を一度集めれば、どの相続手続きにも使い回せますか?
A. 多くの手続きでコピー利用や法定相続情報一覧図への置き換えが認められており、原本一式をベースに複数の手続きに展開できます。
戸籍謄本準備のチェックリスト
戸籍謄本準備のチェックリスト
| チェック項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 被相続人の本籍地の確認 | 死亡時の本籍地を住民票等で確認したか |
| 被相続人の出生から死亡までの戸籍 | 戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍が連続してそろっているか |
| 相続人全員の現在戸籍 | 相続人全員分の戸籍謄本を取得したか |
| 代襲相続人の確認 | 先に亡くなった相続人がいる場合、その子の戸籍も取得したか |
| 養子の確認 | 養子がいる場合、養子の戸籍も取得したか |
| 法定相続情報一覧図の検討 | 複数の手続きがある場合、法定相続情報一覧図の取得を検討したか |
まとめ
- 相続税・登記の必要書類である戸籍謄本としては、「被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等」と「相続人全員の現在戸籍謄本」が必須の土台になります。
- 出生から死亡までの戸籍が必要な理由は、「相続人を漏れなく確定するため」です。婚姻・離婚・養子縁組・認知などの履歴を全期間分確認しなければなりません。
- 取得は、「死亡時の本籍地の役所で戸籍を取り、出生までさかのぼる」「広域交付制度や郵送請求を活用する」という流れが、初心者にも負担が少なく確実です。
- 法定相続情報一覧図を活用すれば、戸籍謄本一式の代わりに複数の手続きで使い回すことができ、原本の追加取得を減らせます。
- 「相続人を漏れなく確定できるだけの戸籍一式を早めに集めておくこと」が、相続税申告と相続登記をスムーズに進める最短ルートです。









![ダイヤモンド・セレクト 2018年 12 月号 [雑誌]](https://nagae-sozoku.tax/cms/wp-content/themes/nagae-zeiri/img/asin_B07KH1S8NR.jpg)








