目次
税務調査と相続税の応急対応|資料整理・応対窓口・記録の取り方を解説
追徴税額と精神的負担を最小限に抑える最善の対処法
相続税の税務調査では、「連絡内容を正確に記録し、資料と申告内容を整理し、税理士を窓口にして冷静に対応する」ことが、追徴税額と精神的負担を最小限に抑える最善の応急対応です。相続税の実地調査は申告全体の5〜6%前後ですが、一度調査対象になると8割超で申告漏れが指摘されているため、連絡を受けた直後からの準備と当日の受け答えの質が、その後の結果を大きく左右します。
この記事のポイント
- 相続税の税務調査が決まったときの大事な3ステップは「①事前通知の内容を記録 ②申告内容と資料を整理 ③税理士を窓口にして対応」です。
- 実地調査率は約5〜6%ですが、実地調査が行われた案件の約8割以上で申告漏れが指摘されており、準備不足はそのまま追徴税額の増加につながります。
- 連絡が来た直後から調査後まで、「話した内容・日程変更・指摘事項」をメモで残すことが、万一の不服申立てや税額交渉の土台になります。
今日のおさらい:要点3つ
- 相続税の税務調査の連絡が来たら、その場で詳しく説明せず「内容のメモ+準備期間の確保+税理士への相談」を優先することが最も大事です。
- 事前準備では、相続税申告書一式と戸籍・通帳・不動産・保険などの資料を一元管理し、「どの財産について聞かれてもファイルを開けば説明できる状態」を目指します。
- 調査当日と調査後は、事実に基づき簡潔に答え、分からないことは「確認して後日回答」とし、指摘内容はすぐに押印せず十分に確認してから結論を出すべきです。
この記事の結論
- 相続税の税務調査が入ったときは、「連絡内容の記録→資料整理と申告内容の再確認→税理士を窓口とした冷静な応対」を順番通りに行うことが最重要です。
- 相続税の実地調査率は5〜6%程度ですが、調査対象の約8割以上で申告漏れが指摘されており、ノープランで臨むと不利になりやすい実務です。
- 調査に必要な書類は、被相続人の戸籍・住民票・通帳・不動産・保険・債務資料など、相続税申告のために集めた資料が一式ベースになります。
- 最も大事なのは、「感情的に反論する」のではなく、「資料と事実で説明できる体制」を整えておくことです。
相続税の税務調査はどれくらいの確率で、どんなケースで入るのか?
税務調査の実地調査率と最新データ
相続税の税務調査は「誰にでも必ず来るわけではないが、一度選ばれると高い確率で何らかの指摘を受ける」というのが最新データから見える実態です。
- 国税庁が公表した令和5事務年度のデータでは、相続税の申告件数約15万5,000件のうち実地調査件数は8,556件で、実地調査率はおよそ5〜6%とされています。
- そのうち申告漏れなど「非違」があった件数は7,000件超で、割合にすると8割以上に達しています。
- さらに、令和6事務年度の調査状況では実地調査件数・追徴税額ともに増加傾向が続いており、相続税分野への監視は強まっています。
「調査対象に選ばれる確率は高くないが、選ばれたら軽くは済まない」と考えて準備した方が現実的です。
調査対象として選ばれやすい典型パターン
相続税の税務調査はランダムではなく、次のような特徴のある申告が重点的に選ばれやすいとされています。
- 預貯金が多い/亡くなる直前の多額引き出しがある/名義預金が疑われるケース
- 現金・タンス預金の記載が乏しく、生活レベルや収入と比べて違和感があるケース
- 不動産の評価額が路線価や周辺取引と比べて過度に低く見積もられているケース
- 海外資産・同族会社株式・多額の生前贈与など、複雑な財産構成の相続
- 無申告が疑われるケースや、過去の税務調査で大きな指摘を受けた家系
このような背景があるため、特に「預金の動きや名義預金」「生前贈与」「不動産評価」の3点は、資料と説明を事前に整理しておく必要があります。
税務調査の基本的な流れ
税務調査の流れは、概ね次のステップです。
- 税務署からの事前通知(電話・書面・来署依頼など)
- 日程調整と調査場所(自宅・税理士事務所など)の決定
- 必要書類の案内と事前準備
- 調査官2名程度による訪問・ヒアリング・資料確認(通常1〜2日)
- 必要に応じた追加資料の依頼
- 指摘事項の説明と税額の修正協議
- 納税者側の修正申告または税務署による更正処分・決定通知
この全体像を知っておくことで、「何をいつまでに準備すべきか」が見えやすくなり、不必要な不安を減らせます。
税務調査の連絡が来た直後に、何から手をつけるべきか?
1. 事前通知の内容を正確に記録する
税務署からの連絡を受けた瞬間に最も大事なのは「その場で深く話し込まず、内容を正確にメモして準備時間を確保すること」です。
電話・書面で確認すべきポイントは次の通りです。
- 対象となる相続(被相続人の氏名・死亡日・申告年度)
- 担当部署・担当者名・連絡先電話番号
- 想定される調査日・時間・場所(自宅・事務所など)
- 主な確認事項や、事前に用意してほしいと伝えられた資料の概要
「まずはメモ、次に税理士」が鉄則です。
2. 申告内容の再確認とリスクの洗い出し
連絡を受けたら、調査までの期間でまず行うべきは「申告書の見直し」と「弱点になりそうな箇所の洗い出し」です。
- 相続税申告書一式と別表・財産明細書を確認し、「どの財産にどの評価方法を使ったか」「どのような特例を適用したか」をチェックする。
- 被相続人の預貯金の通帳(少なくとも死亡前5年分が目安)を見直し、不自然な引き出しや贈与がないかを確認する。
- 名義預金の疑いがありそうな口座(子や孫名義だが被相続人が管理していたもの)がないかを洗い出す。
明らかな誤りや申告漏れが見つかった場合は、調査前に自発的な修正申告を行うことで、加算税が軽減される余地もあります。
3. 必要資料の整理(ファイル化)のコツ
「税務調査は資料勝負なので、紙とデータをテーマ別ファイルにしておくこと」が初心者がまず押さえるべき点です。
最低限、次のようなファイル分けが有効です。
- 戸籍・住民票・相続関係図ファイル(相続人関係を示すもの)
- 預貯金・証券ファイル(通帳・残高証明・取引明細)
- 不動産ファイル(登記簿・固定資産税明細・評価資料)
- 保険・年金ファイル(保険契約書・支払通知書・年金証書)
- 債務・葬儀費用ファイル(ローン残高証明・葬儀領収書など)
このように整理しておけば、調査当日に「この件についてはこのファイル」という形でスムーズに対応できます。
税務調査の当日と調査後に、どのように応対すべきか?
当日の流れと準備しておくべき心構え
調査当日は「日常会話のような質問の中に、重要な確認ポイントが含まれている」と意識しながら、冷静に対応することが重要です。
一般的な当日の流れは次の通りです。
- 調査官2名程度が訪問し、身分証明の提示・挨拶・調査の趣旨説明
- 相続人代表者へのヒアリング(家族構成・被相続人の職業・資産形成の経緯など)
- 家屋内・金庫などの確認や、現金・貴重品の有無の確認
- 事前に準備した資料の照合・コピー・一部持ち帰り
- 最後に、今後の流れと追加資料の依頼事項の説明
「調査官は敵ではなく、事実を確認しに来ている」という視点を持つと、過度に構えずに済みます。
質問への答え方で避けるべきNGパターン
- 記憶が曖昧なことをはっきり断定してしまう(後から通帳などと矛盾すると不利)。
- 「たぶん」「おそらく」で推測を話し過ぎる(事実と推測の区別がつかなくなる)。
- 他の相続人への不満や感情を長々と話し、論点が財産から外れてしまう。
逆に、望ましい答え方は次の通りです。
- 分からないことは「今の時点では分かりません。資料を確認して後日お答えします」と率直に伝える。
- 資料がある事項については、通帳・契約書などを示しながら事実ベースで簡潔に説明する。
- 専門的な評価や制度の話は、その場で判断せず、立会い税理士から説明してもらう。
調査後の指摘・追徴への対応と、不服申立てのルート
調査後、税務署から追徴税額の説明を受けたときの対応も重要です。
- 説明に納得できる場合:税務署の案内に従って修正申告または期限後申告を行い、追徴税額・加算税・延滞税を納付します。
- 納得できない場合:税務署による更正通知または決定通知が出た日の翌日から3ヶ月以内に「再調査の請求」または「審査請求」(国税不服審判所)を行うことができます。
この段階で効いてくるのが、「調査当日から残してきたメモと資料」です。「調査の記録は、将来の保険」だと考え、連絡・発言・指摘内容をノートやファイルに残しておくことが重要です。
よくある質問(Q&A)
Q1. 相続税の税務調査はどれくらいの確率で来ますか?
相続税の申告全体に対する実地調査率はおよそ5〜6%で、10人に1人より少ない水準ですが、調査対象の約8割以上で申告漏れが指摘されています。
Q2. 税務調査の連絡が来たら、まず何をすべきですか?
電話・書面の内容(対象相続・担当者・日程候補・必要資料)をメモし、その場で詳しく説明せず、税理士への相談と準備期間の確保を最優先にします。
Q3. 税務調査前にどんな資料を準備すべきですか?
相続税申告書一式、戸籍・住民票、預貯金通帳や残高証明、不動産の登記簿と評価明細、保険・年金の通知書、債務と葬儀費用の領収書などをテーマ別に整理します。
Q4. 税務調査には税理士に立ち会ってもらった方がよいですか?
相続人だけで対応すると不利な発言や説明不足になりやすいため、調査対応の経験がある税理士に窓口と立会いを依頼する方が安全です。
Q5. 調査官の質問にはどう答えるのが適切ですか?
事実に基づき簡潔に答え、分からないことは「資料を確認した上で後日回答します」とし、推測や感情的な発言は避けるのが適切です。
Q6. 税務調査の結果に納得できない場合、どうすればよいですか?
税務署からの更正通知・決定通知の翌日から3ヶ月以内に、税務署長への再調査の請求または国税不服審判所への審査請求を行うことができます。
Q7. 「相続税についてのお尋ね」の書類も税務調査と考えるべきですか?
「お尋ね」は実地調査の前段階の確認で、すぐに不正を疑われているとは限りませんが、無視すると本格的な税務調査に進むリスクがあるため、丁寧に回答すべきです。
まとめ
- 相続税の税務調査が入ったときの応急対応は、「連絡内容の記録→申告内容と資料の整理→税理士を窓口にした一元対応」という3ステップを冷静に踏むことが最も重要です。
- 実地調査率は5〜6%程度ですが、調査対象の約8割以上で申告漏れが指摘されているため、事前準備と当日の受け答え次第で追徴税額とペナルティが大きく変わります。
- 「慌てて一人で抱え込まず、資料と記録を武器に、相続税に強い税理士と一緒に冷静に対応すること」が、税務調査を乗り切る最善の対処法です。









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