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相続対策と比較一覧の視点を活用|生前贈与・保険・不動産・家族信託の向き不向きを解説
4つの手段の特徴を整理して自分の家庭に合う対策を選ぶ
相続対策は「生前贈与・保険・不動産・家族信託」をバラバラに検討するのではなく、比較一覧で特徴と向き不向きを整理してから組み合わせることが、最も失敗しにくい進め方です。生前贈与は節税中心、保険は現金と分割の調整、不動産は評価引き下げと収益、家族信託は認知症・管理対策といった役割の違いを押さえることで、自分の家庭に本当に必要な対策だけを選び取ることができます。
この記事のポイント
- 相続対策は「生前贈与=節税」「保険=現金と分割」「不動産=評価・収益」「家族信託=認知症・管理」と役割が異なり、比較一覧で整理すると選びやすくなります。
- 節税だけ見て手段を選ぶと失敗しやすく、「財産の形・家族構成・年齢・健康状態」という4つの軸で、自分の家庭に合う対策を組み合わせることが重要です。
- 家族信託や不動産活用は高い専門性とコストが必要なため、金額規模と管理の手間を比較し、「やらない勇気」も含めて検討する視点が欠かせません。
今日のおさらい:要点3つ
- 相続対策で初心者がまず押さえるべき点は、「自分の目的(節税・分割・認知症・納税資金)の優先順位を決めること」であり、その目的ごとに手段を比較することです。
- 生前贈与・保険・不動産・家族信託は、それぞれ税効果・柔軟性・初期費用・家族への説明難易度が違うため、比較表でメリット・デメリットを見える化すると判断しやすくなります。
- 「何をどれだけ・いつまで・誰に託したいか」を軸に、複数の対策を少しずつ組み合わせるのが、過度なリスクを避けつつ効果を出すコツです。
この記事の結論
- 相続対策では、生前贈与・保険・不動産・家族信託を比較一覧で整理し、自分の家庭の「財産の形・家族構成・年齢・目的」に合うものだけを組み合わせるべきです。
- 生前贈与は節税効果が高い一方で、贈与税・不動産取得税などの負担や「渡した財産を取り戻せない」リスクがあるため、金額と頻度を慎重に設計する必要があります。
- 保険は、相続税非課税枠・納税資金・争族防止に幅広く使える万能型で、他の対策と組み合わせる「潤滑油」としての役割が強い手段です。
- 不動産活用は、評価額の圧縮・賃料収入が魅力ですが、空室リスクや管理負担が大きく、家族の意向と地域の不動産市況をよく見て判断する必要があります。
- 家族信託は「認知症と複雑資産の管理」に強く、大口不動産オーナーや経営者には有効ですが、信頼できる受託者がいない家庭には向きません。
相続対策の「比較一覧」をどう見れば、自分の家庭に合う方法が分かるのか?
相続対策の主な目的と4つの手段の関係
相続対策は「何のためにやるのか」を先に決めることが一番大事です。
代表的な目的は次の4つです。
- 節税:将来の相続税額を減らしたい
- 分割:子どもたちの取り分を公平に・スムーズに決めたい
- 納税資金:相続税や諸費用を払う現金を用意したい
- 認知症・管理:判断能力低下後も財産を動かせる状態を保ちたい
それぞれの目的に対する4つの手段の相性は、おおむね以下のイメージになります。
- 生前贈与:節税◎/分割◯/納税資金△/認知症対策×
- 保険:節税◯/分割◎/納税資金◎/認知症対策△
- 不動産:節税◯/分割△/納税資金△/認知症対策△
- 家族信託:節税△/分割◯/納税資金△/認知症対策◎
「節税メインなら生前贈与+保険、認知症と管理メインなら家族信託+遺言」というように、目的に応じて主役が変わると理解してください。
家庭別に見る「向き不向き」の考え方
- 現金・預金が中心の家庭:生前贈与と保険が中心。少額をコツコツ移す暦年贈与と、納税資金・代償分割用の保険を組み合わせる設計が向きます。
- 不動産が多い家庭:小規模宅地等特例や不動産の有効活用に加え、家族信託で管理権限を整理し、必要に応じて生前贈与や法人化を検討する形が現実的です。
- 高齢で認知症リスクが高い家庭:家族信託や任意後見を活用し、「資産を止めない」仕組みづくりを優先し、その上で保険や贈与を足していく順番が安全です。
目的や家族構成ごとに「どれをメインに、どれをサブに使うか」を比較することで、自分にとって過不足のない組み合わせが見えてきます。
【生前贈与・保険】相続対策の王道2本をどう使い分けるべきか?
生前贈与の強み・弱み・向いている家庭
生前贈与は「時間を味方につけた節税と早期承継」が最大の強みですが、「渡したものは戻ってこない」という覚悟が求められる手段です。
強み
- 暦年贈与(年間110万円までの非課税枠)などを活用して、少しずつ財産を移すことで、将来の相続財産そのものを圧縮できる。
- 子・孫に早めに財産を移して活用させることで、親の老後と子世代の資産形成を両立できる。
弱み
- 110万円を超える贈与には贈与税がかかり、税率が相続税より高くなるゾーンもあるため、金額設計を間違えると逆効果になる。
- 不動産贈与では、不動産取得税・登録免許税なども発生し、相続よりトータルコストが高くなる場合もある。
「贈与税を計算したうえで、あえて贈与するかどうか」を、相続税との比較でシミュレーションすることが重要です。
保険の強み・弱み・向いている家庭
生命保険は、「非課税枠・現金・指定できる受取人」という3つの特徴を持ち、ほぼどの家庭でも相続対策の土台として使いやすい手段です。
強み
- 死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があり、この範囲内は相続税がかからないため、現金を効率よく残せる。
- 受取人を指定できるため、自宅を継ぐ子以外に保険金でバランスを取るなど、争族防止に有効。
- 死亡後比較的早く支払われるため、納税資金・葬儀費用・生活費の即時確保に役立つ。
弱み
- 非課税枠を大きく超える高額な保険は、保険料負担が重いだけでなく、その部分の保険金に相続税もかかるため、コスパが下がる。
「保険は他の対策とセットで使う”現金の出口”」と考えると、過不足ない設計がしやすくなります。
生前贈与+保険の組み合わせ事例
事例1:預金1億円を持つ70代夫婦
子・孫に毎年110万円ずつ贈与しながら、一部を保険に振り分けて「非課税枠内の死亡保険金」で納税資金と遺産分割の調整資金を用意する。
事例2:不動産オーナーで現金が少ないケース
不動産は相続まで保有しつつ、毎年の賃料の一部を保険料に回して、将来の相続税納税資金を死亡保険金で作る。
このように、贈与と保険は「時間軸」と「現金」という観点で相性が良い組み合わせです。
【不動産・家族信託】管理・認知症リスクを踏まえた相続対策はどう選ぶか?
不動産を使った相続対策の特徴
不動産を使った相続対策は「評価額の圧縮と収益確保」の両立が狙える一方で、家族にとっての管理負担と分割の難しさが最大のデメリットです。
節税面
- 土地を有効活用して賃貸物件を建てると、現金より相続税評価額が下がりやすい(貸家建付地評価など)。
- 土地の分筆などで形を変え、評価引き下げを図る方法もある。
リスク面
- 空室・修繕・金利・地域の人口減など、不動産特有のリスクを家族が引き継ぐことになる。
- 不動産は分けにくく、「誰が住むか」「売るかどうか」で争いになりやすい。
「節税と引き換えに、将来の家族に管理の宿題を渡す」手段であることを理解した上で選ぶ必要があります。
家族信託の役割と向き不向き
家族信託は「認知症や将来の管理困難に備え、家族に財産の管理権限を託す仕組み」です。
メリット
- 高齢で判断能力が低下しても、子など受託者が不動産の売却・賃貸・修繕などを継続でき、資産凍結を防げる。
- 受益者・次の受益者などを信託契約で柔軟に決められ、遺言以上に細かい承継設計ができる。
デメリット・向かないケース
- 信託契約の設計・登記・専門家報酬などの初期コストがかかり、小規模な財産だけの場合は費用対効果が低い。
- 信頼できる受託者(多くは子)がいない家庭や、一人暮らしで頼れる人が少ない場合は、制度を使いづらい。
家族信託が向いているのは、「不動産オーナーや経営者など、止まると困る財産を持つ人」であり、預貯金だけの家庭には必須ではありません。
不動産+家族信託の活用イメージ
賃貸不動産オーナーが家族信託を使う例
親(委託者・受益者)の所有する賃貸物件を、子(受託者)名義に信託し、親が元気なうちは収益を親に戻し、認知症後も子が管理・運用を継続できるようにしておく。
自宅の管理と将来の住み替えを柔軟にする例
高齢になってから施設入居や売却が必要になっても、子が信託契約に基づいて売却・賃貸を進められるように設計する。
このように、不動産と家族信託は「管理」と「柔軟性」でセット活用されるケースが増えています。
よくある質問(Q&A)
Q1. 生前贈与と家族信託はどちらが相続対策に向いていますか?
贈与税を抑えつつ相続税を減らしたいなら生前贈与、認知症後も財産を家族に管理してほしいなら家族信託が向いており、目的で選び分けるのが適切です。
Q2. 相続対策でまず検討すべき代表的な方法は何ですか?
生前贈与・生命保険・不動産活用・家族信託が代表的で、多くの専門家はこの4つを組み合わせた「生前対策ベスト5」などとして紹介しています。
Q3. 家族信託はどんな人に向いていますか?
賃貸不動産オーナーや会社経営者など、判断能力低下後も積極的な財産管理が必要な人、認知症による資産凍結を避けたい人に特に向いています。
Q4. 不動産による相続対策は常に有利ですか?
評価額の圧縮など節税効果はありますが、空室リスク・修繕・売却難・家族の負担が大きくなるため、現金や保険との比較で本当に必要かを見極める必要があります。
Q5. 生前贈与は毎年110万円までなら無条件で得ですか?
年間110万円までの暦年贈与は贈与税がかかりませんが、相続開始前3年以内贈与の持ち戻しや、財産全体とのバランスを考えないと、かえって不利になる場合もあります。
Q6. 保険はどの家庭にも入れた方がよい相続対策ですか?
死亡保険金の非課税枠や分割調整のメリットは広く有効ですが、保険料負担や老後資金とのバランスを考え、必要額と期間を絞って活用するのが現実的です。
Q7. 家族信託が必要ないケースもありますか?
預貯金中心で財産規模が小さい家庭や、頼れる受託者がいない場合などは、家族信託より遺言・保険・贈与で十分対応できることが多く、無理に導入する必要はありません。
まとめ
- 相続対策の比較一覧を活用することで、「生前贈与=節税」「保険=現金と分割」「不動産=評価と収益」「家族信託=認知症と管理」という役割の違いが一目で分かります。
- 「自分の家庭の目的・財産の形・家族構成・年齢」に照らして、生前贈与・保険・不動産・家族信託の向き不向きを整理し、必要なものだけを少しずつ組み合わせることが、過度なリスクを避けつつ効果を出す最善策です。









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