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2019年05月31日

生前贈与で不動産を渡すときの手続きは?必要な費用や注意点も解説

 

生前贈与で不動産を渡すときには、主に贈与契約書の作成と登記申請、贈与税の申告で手続きが完了します。
贈与で必要となる費用は、登録免許税、不動産取得税、専門家への依頼手数料などです。
手続きは簡単ですが、実は必要な費用や納税額を考えると、相続のほうが有利になる場合もあるのでどちらが良いかを正確に判断しなければなりません。

 

生前贈与で不動産を贈与する際の手続きの流れ

 

必要書類を収集する

 

生前贈与で不動産を渡す場合は、まず登記申請のために必要となる書類を収集します。
登記申請のために必要となる書類は、受贈者の場合は住民票を用意するだけで問題ありませんが、贈与者の場合は次のとおりです。

・登記事項証明書
・固定資産評価証明書
・印鑑証明書
・登記識別情報

印鑑証明書は登記申請を行なうときからさかのぼって、3ヶ月以内に発行されたものであるようにしてください。
また登記識別情報は、登記済権利証でも可能です。

 

贈与契約書を作成する

 

登記申請を行なう前に、贈与が行なわれた事実を第三者に証明するための証拠となる「贈与契約書」を作成します。
贈与契約書が作成されていないと生前の贈与の事実が証明されず、相続税が課せられる可能性もあるため、親族間での贈与であっても必ず作成してください。

 

贈与契約書では贈与の内容、贈与の方法、贈与の日付などを記入し、最後に贈与者の名前と住所、受贈者の名前と住所を記載します。
また贈与者と受贈者の名前の横には押印をしますが、贈与契約書の証拠性を高めるために、実印での押印が良いでしょう。
印鑑証明書を添付しておけば、さらに証拠性を高めることができます。

 

さらに不動産の場合は、登記事項証明書を参考にして対象物を特定できるような情報を記入しておきましょう。
土地の場合は土地のある住所、地番、地目、地積が必要です。
建物の場合は建物のある住所、家屋番号、建物の種類、構造、床面積を正しく記載しておきます。

 

贈与契約書は同じ内容のものを2通作成して、贈与者と受贈者がそれぞれ所持・保管することで生前贈与の証拠となります。

 

登記申請書の作成

 

贈与契約書の作成が完了したら、法務局に提出する登記申請書の作成しましょう。
登記申請は不動産の名義を変更するための手続きのことで、最初に収集した必要書類と申請書を法務局に提出することで行なえます。

 

申請書には決まった様式はありませんが、登記の目的や発生した原因、添付書類の種類、課税価格や登録免許税の金額を記入し、最後に贈与契約書と同様に土地や建物の詳細な情報を記載して締めます。

 

登記原因証明情報の作成

 

登記申請のためには、申請書と併せて「登記原因証明情報」の作成をします。
登記原因証明情報とは、法務局に対して土地や建物を贈与したという事実を証明するための書類です。

 

登記原因証明情報にも決まった様式はありませんが、登記申請のために必要な情報と贈与によって不動産の所有権が移転したという旨を記入します。
また登記申請書と同様に、土地や建物の詳細な情報についても記載してください。

 

登記原因証明情報と一緒に、納税が必要となる登録免許税額分の収入印紙を台紙に貼り付けたものを作成しておきます。

 

登記申請

 

必要書類と登記申請書、登記原因証明情報が揃ったら、法務局に行って登記申請を行ないます。
登記済権利証以外の書類は全てホチキスで留めて、登記済権利証は別でファイルに入れて提出します。

 

書類の提出は、持ち込み・郵送・オンラインの3種類がありますが、持ち込みか郵送で行なうほうが簡単です。
オンラインで申請するためには、申請のための環境を整えなければなりません。
法務局への持ち込みや郵送は、贈与される土地や建物がある住所を管轄する法務局です。

 

提出してから1~2周間程度で登記申請が完了します。

 

贈与税の申告

 

贈与された不動産の価額が110万円を超える場合、贈与税の申告が必要です。
ただし土地や建物を贈与する場合には、様々な特例を適用させることができるため、贈与者と受贈者の関係性などによっては大幅な控除を受けることもできます。
控除が受けられる特例については後で解説していますが、贈与税の節税のためにも適用できる特例は必ず適用させるようにしましょう。

 

生前贈与にかかる税金や費用

 

登録免許税

 

不動産を生前贈与する場合、固定資産税評価額によって算出される「登録免許税」という税金を納税しなければなりません。
登録免許税は登記申請をするときに課税されます。
登記原因証明情報の作成のところで収入印紙を台紙に貼り付けると解説しましたが、登録免許税の納税のためです。

 

登録免許税の金額の算出は「固定資産税評価額×2%」で算出されます。

 

不動産取得税

 

不動産取得税は建物や土地を取得したときに課せられる税金のことで、都道府県に納税します。
登記申請のタイミングで納税するものではなく、土地や建物を取得してから半年後から1年後に納税通知書が送付されてきます。

 

不動産取得税の金額の算出は、住宅と土地の場合は「固定資産税評価額×3%」で、住宅以外の建物の場合は「固定資産税評価額×4%」です。
住宅と土地の場合の税率は2021年3月31日までの軽減措置で、その後は税率が変わる可能性もあります。

 

贈与税

 

贈与税の申告のところで解説したように、場合によっては贈与税が課せられることもあります。
贈与税の税率は基礎控除額を差し引いた後の残額と、贈与者と受贈者の関係性によって変わるため、詳しくは次の税率表を参照してください。

 

一般贈与財産用 特例贈与財産用
課税価格 税率 控除額 課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% – 200万円以下 10% –
300万円以下 15% 10万円 400万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円 600万円以下 20% 30万円
600万円以下 30% 65万円 1000万円以下 30% 90万円
1000万円以下 40% 125万円 1500万円以下 40% 190万円
1500万円以下 45% 175万円 3000万円以下 45% 265万円
3000万円以下 50% 250万円 4500万円以下 50% 415万円
3000万円超 55% 400万円 4500万円超 55% 640万円

 

出典:国税庁:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

専門家への手数料

 

生前贈与で土地や建物を贈与する場合は、登記申請などの手続きがあるため多くの方が専門家にサポートを依頼します。
司法書士や税理士に依頼する場合の手数料は業種によって異なりますが、司法書士に依頼する場合は約5万円、税理士に依頼する場合は約5~10万円程度です。

 

司法書士と税理士は役割が違うので、登記申請の代行を依頼するのであれば司法書士、贈与税の申告や贈与税の相談であれば税理士に依頼します。
そのため一概に手数料の安さで選択できることではありません。

 

節税するために押さえたいポイント

 

「配偶者控除」を適用させる

 

「配偶者控除」とは、配偶者に対して居住用の不動産を贈与したときに適用できる特例で、基礎控除110万円に加えて2,000万円までの控除が適用されるというものです。
配偶者控除を適用させるためには20年以上の婚姻関係があることと、居住用の不動産であること、贈与があった翌年3月15日に実際に居住していることが条件です。

 

また3月15日以降も居住し続ける予定であることが必要なので、一時的な仮住まいに対しては適用不可です。
そして同じ配偶者からの贈与に対して、一生に一度しか受けられない適用させることができません。

 

適用させるためには申告が必要で、財産の贈与を受けてから10日以降に作成された戸籍謄本と戸籍の附票の写し、登記事項証明書などの建物を取得したことを証明する資料、固定資産評価証明書などの建物を評価するための資料を揃えて申告します。

 

「相続時精算課税制度」を適用させる

 

「相続時精算課税制度」とは、贈与を受けたときに2,500万円までが控除されるという特例で、適用させるための条件は65歳以上の親が成人している子に対して贈与を行なうことです。
建物や土地だけでなく現金を贈与された場合でも適用させられますが、相続が開始されたときに相続財産の中に贈与分を含めて計算しなければならないという決まりがあります。

 

つまり贈与があったときは2,500万円までが非課税になりますが、相続開始時に相続税の課税対象になるということです。
贈与税が無税になっても相続税の支払い義務が生じるので、メリットはないと感じられるでしょう。

 

しかし贈与時よりも相続時のほうが財産の価値が下がる場合は、相続時精算課税制度を適用させたほうが節税できる可能性があります。
相続時精算課税制度の相続税の税額は、相続が起こったときの財産の価値から算出されるからです。

 

土地の場合は年数を経ても価値は下がりませんが、建物は年数を経ると価値が少しずつ下がっていきます。
そのため建物を贈与する場合にはメリットがある可能性も考えられます。

 

ただし何らかの財産に対して相続時精算課税制度を適用させた場合、1年間で110万円の基礎控除が適用できる暦年課税はもう利用することができません。
どちらを選んだほうが節税効果があるのかじっくり考えて決めて、適用する際には注意が必要です。

 

暦年課税を利用する

 

 

1年間で110万円の贈与税基礎控除を利用できる課税方式を「暦年課税」と呼んでいますが、暦年課税を利用し、年間110万円以内の贈与を行なって贈与税と相続税の節税をする方法です。
暦年課税を利用した生前贈与は、節税対策として最も頻繁に利用されています。

 

「相続時精算課税制度」のところで解説したように、相続時精算課税制度を適用させていないのであれば、贈与税には1年間で110万円の基礎控除が用意されています。
建物の贈与では適用が難しいですが、土地の贈与であれば110万円以内に収まるように土地を分割して贈与すれば、贈与税を課せられることなく贈与が行なえます。

 

もちろん何回かに分けて土地の贈与を行なえば相続財産を減らすこともできるので、相続税対策にもなる方法です。

 

不動産を生前贈与する場合の注意点

 

登録免許税と不動産取得税が上がる

 

登録免許税と不動産取得税は、生前に贈与を行なったときよりも相続のときのほうが金額が低くなります。
土地や建物を贈与するときには、登録免許税と不動産取得税という2種類の税金が課せられると解説しましたが、実は相続の際には2種類の税金に軽減措置が取られます。

 

登録免許税は贈与のときであれば税率2%となりますが、相続の場合は0.4%と大幅に税率が下がります。
不動産取得税に関しては、贈与のときには3%、もしくは4%の課税が行なわれますが、相続の場合は全く課せられません。

 

登録免許税と不動産取得税に関して言えば、贈与よりも相続を選択したほうが確実に節税対策になります。
ただし相続税と贈与税のバランスや適用させられる特例も含めて考えて、最も有利な方法を選択することが大切です。

 

支払う税額が大きくなる可能性がある

 

前の項目で解説したように、生前の贈与においては相続では大きく軽減される登録免許税と不動産取得税という2種類の税金があり、さらに贈与税が課せられてくる可能性もあります。
そのため相続のときと比較して、一年間で支払うべき税額が大きくなるケースがあるため注意しましょう。

 

ただし特例などを適用することができて、贈与税が課せられないという状況であれば、相続よりも贈与のほうが税額が小さくなることもあります。
どちらが得になるかは状況によって変わるので、実際に贈与したときの税金の金額と、相続で支払うことになるであろう税金の金額を計算して、どちらにするべきかを慎重に選択してください。

 

生前贈与をする場合は早めに

 

相続開始からさかのぼって3年以内に行なわれた贈与は、相続財産の中に含められ相続税の加算対象となります。
そのため相続ではなく生前の贈与を選択した場合は、なるべく早めに贈与をしておくことが大切です。

 

相続開始から3年以内に行なわれた贈与に関しては、「贈与税」ではなく「相続税」の課税対象となるため暦年課税の「1年間で110万円の控除」も適用されません。
つまり相続が開始されたときからさかのぼって3年間の間に、毎年100万円ずつの土地の贈与を行なっていた場合は、相続財産として合計300万円の土地が相続税の課税対象となります。

 

せっかく行なった生前贈与が無駄になってしまうケースなので、贈与を考えている方はなるべく早めに開始しておくことをおすすめします。
ただし受贈者が孫や法定相続人以外の人物であった場合は、3年以内に贈与を受け取っていたとしても相続財産の中には含ませません。

 

不動産には維持費がかかる

 

土地や建物を所有していると、固定資産税や都市計画税、管理費などの諸経費が必要です。
贈与者が支払っていた諸経費を受贈者が支払うことになるので、結局支出額自体は変わりませんが、相続税対策で贈与される土地や建物は、ほとんどの場合年齢が若い世代に対する贈与となるでしょう。

 

相続税対策は財産を相続する若い世代の人に対して、負担が大きくならないようにするためのものですが、土地や建物を贈与すると諸経費の支払い義務は若い世代の受贈者に移り受贈者の負担が大きくなります。
場合によっては相続税以上の負担を強いる結果になる可能性もあるため、固定資産税や管理費も含めて考えるようにしてください。

 

贈与の時期が早ければ早いほど「生前贈与」を選択した意味が薄くなっていきますが、相続開始時点からさかのぼって3年以内に行なわれた贈与は、相続財産の中に含めて課税対象となるため、贈与を行なうタイミングも大切です。

 

生前贈与以外の選択肢としての「遺言書」

 

生前贈与以外の選択肢として、遺言書を残すという方法も有効です。
遺言書に土地や建物を特定の相続人に渡したいという記載をすると、被相続人は任意の相続人に相続させることができ、登録免許税や不動産取得税を大幅に軽減させられることにもつながります。

 

ただし遺言書が効力を発揮するのは被相続人の死後であるため、被相続人が任意のタイミングで財産を渡すことはできません。
また遺言書の内容が確実に遂行されるという保証はないため、相続人の誰かが遺言書に対して意義を申し立てれば、遺言書に記載されていた内容が完全には実行されないケースもあるため、生前の贈与のほうが確実性は高いです。

 

繰り返しになりますが、相続と贈与でどちらの税額が低くなるのかをよく計算した上で行なわなければ、相続人に大きな負担を強いる結果となる可能性もあります。

 

資産価値の上昇が見込まれるものは贈与すべき

 

相続よりも生前の贈与のほうが良いとされる不動産は、資産価値が上昇する見込みのあるものです。
贈与時よりも相続時のほうが評価額が上昇するということが予想されるのであれば、財産としての価値が上昇する前に贈与をしてしまったほうが納税額が少なくなります。

 

例えば贈与時に3,000万円だった土地や不動産が、相続時には5,000万円になる予想であれば財産の評価額には2,000万円の差が発生するため、その分納税額も少額です。

 

このときには、必ず「相続時精算課税制度」は適用しないようにしましょう。
財産としての評価額が低いときに贈与税を支払ってしまい、相続税は無税となるようにしなければ節税効果がなくなってしまいます。

 

専門家への依頼手数料も考慮する

 

土地を分割して複数回に分けた贈与を行なった場合、贈与税も相続税も課税されずに財産を渡せます。
しかし複数回に分けた贈与を行なって、毎回専門家に手続きを代行してもらう場合は、依頼手数料の金額が高額になるという可能性もあるため注意してください。

 

相続を選ぶか贈与を選ぶかは、単純に2種類の税金の金額だけで決められるものではなく、相続時にかかるコスト全てと、複数回の贈与にかかるコスト全てを併せて計算し決定するものです。

 

不動産の生前贈与は相続とよく比較して

 

不動産の生前贈与は節税対策に効果的ですが、相続した場合とよく比較して行なわなければ納税額が反対に大きくなる可能性もはらんでいます。

 

贈与の場合は登録免許税と不動産取得税が通常通りに課税されますが、相続時であれば大幅に軽減されるので、2種類の税金は相続のときのほうが低額です。
しかし、贈与の際には様々な控除や特例を適用させられるため、条件が合えば相続税と贈与税の両方が無税になる可能性もあります。

 

建物や土地の贈与は納税額が大きくなるので、贈与と相続のどちらが節税効果が高くなるか、よく比較してから決定しなければなりません。
贈与と相続の比較は計算によって算出できますが、計算を間違えると大きな出費につながる可能性もあります。
節税方法の相談も兼ねて、相続専門の税理士に相談することが最善の策です。

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