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2019年05月31日

生前贈与を現金で行なう方法は?必要な手続きと注意点を解説

 

生前贈与を現金で行なうには、手渡し、銀行振込、通帳の贈与などが考えられますが、いずれにしても贈与の事実を示す証拠を残しておくことが重要です。
証拠を明確にするためには贈与契約書を作成し、正しい方法で贈与を行なうようにしてください。
また特例などを適用して贈与税を非課税にする方法もあるため、節税対策の方法についても把握しておく必要があります。

 

生前贈与を現金で行なうとどうなるの?

 

生前贈与を現金で行なった場合、「暦年課税制度」によって年間110万円までの贈与であれば贈与税が課せられません。
不動産などでは贈与対象物の価値がまとまっていて高額であるため、年間110万円以内に収まらない場合も多いです。
しかし金銭であれば分割での贈与が行なえるので、贈与税の課税対象とならずに贈与を行なうことができます。

 

ただし現金による生前贈与があったということを証明するためには、正確に贈与の手続きを行なう必要があり、贈与を証明できない場合は本来支払う必要のない贈与税や相続税が課せられる可能性もあります。
また申告を行なわなかった場合は刑事罰の対象となる可能性もあるため、正式な方法に従って行なうことが重要です。

 

生前贈与を現金で行なう方法

 

現金の手渡し

 

現金の手渡しは贈与の方法として最も手軽ですが、贈与を行なった記録が残りません。
手渡しで贈与を行なう際には、必ず「贈与契約書」を作成して贈与者、受贈者、贈与があった日付、贈与の内容と方法を明らかにしてください。

 

贈与契約書は贈与者と受贈者の名前と住所、日付以外の内容に関してはパソコンで作成しても問題ありません。
ただし内容以外の部分は自筆で記入し、贈与者と受贈者の名前の横にはそれぞれの実印を押印しておくようにしてください。

 

万が一贈与契約書が存在していない場合「不明出金」として扱われ、相続税の課税対象となる可能性があります。

 

銀行振込

 

銀行振込は通帳に記録されるため、手渡しと違い現金による生前贈与があったという証拠を残せることが強みです。
贈与者と受贈者の名前、振込があった日付、振り込まれた金銭の金額などが明確になるので、贈与があったときの通帳は必ず保管しておいてください。

 

ただし証拠が残ると言っても、贈与契約書が必要ないわけではありません。
贈与契約書は第三者に対して贈与の証拠を示すためのものなので、通帳に記入された情報だけでは税務署などに対しては十分な証拠になりません。
贈与契約書には贈与の対象となった銀行の銀行名、支店名、口座番号、名義人名などを記載して作成します。

 

預金通帳の贈与

 

入金されている口座の預金通帳を贈与するという方法も、生前贈与で利用することができます。
ただし贈与として認められるためには、預金通帳が受贈者によって管理されており、いつでも口座内の現金を受贈者が使える状態であることが大切です。
受贈者の管理の元になかったと判断されると「名義預金」と判断されて、相続税の課税対象とみなされます。

 

また預金通帳の贈与であっても、やはり贈与契約書の作成は必要です。
誰に対して、どの預金通帳、いつ贈与したのか、ということを明確に記しておきましょう。

 

現金での生前贈与に必要なことと手続きの流れ

 

贈与契約書の作成

 

現金による生前贈与の方法でも解説しましたが、贈与契約書の作成をすることは重要です。
贈与契約書は名前、住所、日付が自筆であればよく、書式にルールはありませんが、必ず次の項目が揃っている必要があります。

・受贈者の名前と住所、実印での押印
・贈与者の名前と住所、実印での押印
・贈与の内容
・贈与の方法
・贈与をした日付

そして贈与をした日付からさかのぼって、3ヶ月以内に発行された贈与者と受贈者の印鑑証明書を添付すれば贈与契約書の証拠性も上がります。
ただし未成年者との契約は無効となるため、受贈者が未成年である場合は親権者が代わりに契約を行ないます。

 

贈与契約書は同じものを2通作成し、贈与者と受贈者でそれぞれ1通ずつ保管してください。

 

現金の贈与

 

贈与契約書の作成がなされたら、現金の生前贈与を行ないます。
手渡し、銀行振込、通帳の贈与のどれを選んでも良いですが、それぞれの注意点を把握して正確に行なってください。

 

現金を生前贈与する場合、不動産のように登記申請などの必要はないので手続きとして特に難しいことはありません。

 

税務署で贈与税の申告

 

贈与税の申告をする必要がある場合は、申告漏れのないように気を付けましょう。
金銭の贈与では年間で「110万円」という基礎控除額が設けられており、年間の贈与金額の合計が110万円を超過した場合、贈与税の申告が必要です。

 

ただし「特例税率」の適用を受ける場合などは、申告を行なう必要があるので注意してください。

 

現金による生前贈与は非課税にできる?

 

年間の合計額を110万円以内に抑える

 

現金による生前贈与は、贈与税の合計金額が年間で110万円以内であれば贈与税は非課税です。
1年間の贈与合計金額に対して110万円を控除し、110万円を超過した分が課税対象となる課税制度を「暦年課税」と呼んでいます。

 

(1) 暦年課税
イ 概要
1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額(1年間に2人以上から贈与を受けた場合又は同じ人から2回以上にわたり贈与を受けた場合には、それらの贈与を受けた財産の価額の合計額)を基に贈与税額を計算する方式です。
その財産の価額の合計額が基礎控除額(110万円)を超える場合には、贈与税の申告をする必要があります。

出典:国税庁:【贈与税の申告等】

 

上記のように贈与の合計金額が110万円以内に収まっていれば、贈与税の申告をする必要はありません。
生前贈与では年間110万円までの贈与が非課税になることを利用して、長期的に少額ずつの現金を贈与する「暦年贈与」という方法が頻繁に採用されます。

 

ただし毎年の同時期に、同額の贈与が長期的に行なわれていた場合「連年贈与」であると判断され、贈与された合計額が1年間に行なわれたものとして相続税が課税される可能性もあります。
「連年贈与」とは1回で贈与できる財産を複数年にわけて贈与するというものです。

 

生活費・教育費としての贈与

 

子どもや孫に対して生活費、教育費という名目で金銭を贈与する場合は、贈与税の課税対象とはなりません。
法律上の「扶養義務者」が扶養するべき対象に対して、扶養のために必要な金銭を渡したと考えられるためです。

 

生活費や教育費に贈与税が課せられないということは、国税庁の公式サイトにも明記されていますが、場合によっては贈与税が課せられる可能性があるとも記載されています。

 

なお、贈与税がかからない財産は、生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てるためのものに限られます。したがって、生活費や教育費の名目で贈与を受けた場合であっても、それを預金したり株式や不動産などの買入資金に充てている場合には贈与税がかかることになります。

出典:国税庁:No.4405 贈与税がかからない場合

上記のように名目が生活費や教育費であったとしても、本来の目的とは外れたものに金銭が使用された場合、贈与税が課せられることがあります。
課税対象となる金額の基準は状況によって異なりますが、「必要な都度直接これらに充てるためのもの」とあるように、必要な生活費や教育費をその都度渡していれば贈与税が課せられる可能性はほぼありません。

 

配偶者控除を適用させる

 

「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」は、婚姻から20年が経過した配偶者に対して不動産取得を目的とする金銭を贈与した場合、最大2,000万円までが控除される特例です。
2,000万円という控除額は贈与税の基礎控除額である110万円を含めないので、実質的には最大2,110万円までが控除額となります。

 

控除額は大きいですが贈与した金銭は住宅用の資金として使われることが条件で、贈与された年の翌年3月15日までに贈与された資金で得た住宅に受贈者が居住していなければなりません。
3月15日以降も住宅を離れることなく、居住を続けるつもりであることも必要です。

 

また配偶者控除の適用は、同じ配偶者からは一度しか受けることができません。
配偶者控除を適用させた後に離婚してその後再婚し、20年の婚姻関係を築いた後であれば再適用が可能です。

 

住宅取得等資金の特例を適用させる

 

「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」は父母、祖父母から住宅の取得や改築を目的とした金銭を受け取った場合に、限度額以内で相続税が非課税とされます。
限度額は住宅に関する契約をした日や住宅の種類によって変わるので、次の表を参照してください。
パーセンテージは「住宅用の家屋の新築等に係る対価等の額に含まれる消費税」の税率です。

 

住宅用家屋の新築等に係る契約の締結日 省エネ等住宅 左記以外の住宅
~2020年3月31日 8% 10% 8% 10%
2020年4月1日~2021年3月31日 1,200万円 3,000万円 700万円 2,500万円
2021年4月1日~2021年12月31日 1,000万円 1,500万円 500万円 1,000万円

 

出典:国税庁:No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

 

住宅の種類などによって控除額が異なりますが、新築又は取得、増改築に対して、床面積などの条件が設けられているため、適用させるのであれば条件に適した住宅を得なければなりません。

 

住宅取得等資金の特例では受贈者に対しても条件が設けられており、受贈者が直系の親族であること、成人していること、合計所得金額が2,000万円以下であることなどがあります。
また2009年から2014年までに同じ特例の適用を受けている場合は、原則として適用対象外です。

 

「教育資金の非課税特例」と「結婚・子育ての非課税特例」は終了

 

以前は「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」と「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税」という2つの控除も適用可能でしたが、2つの特例は2019年3月31日で終了しました。

 

「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」と「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」と同様に、贈与税に対して大幅な控除を適用させられる特例でしたが今後の再開予定は立っていません。

 

相続時精算課税制度を適用させる

 

「相続時精算課税制度」では最大2,500万円までの控除となり、適用させると贈与があったときには贈与税の課税対象とされず、相続が開始されたときに贈与された分を相続財産の中に含めて相続税の対象とします。
贈与されたときには贈与税が非課税となりますが、相続が開始されれば相続税の課税対象になるということです。

 

相続時精算課税制度は最終的に相続税を支払わなくてはならないため、完全な非課税ではありません。
一見するとメリットがないように感じられますが、贈与税と相続税の基礎控除額は異なり相続税の基礎控除額は相続人の人数によって変化します。
もしも贈与税の基礎控除額よりも相続税の基礎控除額が上回っていた場合は節税が可能であり、法定相続人の人数が多ければ相続税が非課税となる可能性もあるため有効です。

 

相続時精算課税制度を利用すれば贈与税を支払うための資金が用意できない場合でも、多額の贈与を行なうことができるようになります。
ただし相続時精算課税制度を適用させると、年間110万円までの贈与税の基礎控除は受けられなくなります。

 

あらかじめ知っておきたい注意すべきポイント

 

贈与された現金は受贈者が管理すること

 

全ての贈与方法において贈与された金銭について受贈者が知り、管理し、いつでも使える状態になっている必要があります。

 

つまり親が子どもの知らないところで銀行口座を用意し、子どもに知らせることなく口座に入金していた場合などは「名義預金」となり生前贈与として認められません。
また子どもが銀行口座の存在を知っていたとしても、親が通帳やカードを管理し口座内の金銭を子どもが自由に使えない状態であった場合も、相続開始時に相続税が課せられます。

 

贈与の基本は贈与者と受贈者、双方の合意があることです。
名義預金とみなされないためには贈与契約書を作成し、受贈者が自ら開設した銀行口座に振り込み、通帳やカードなどは受贈者本人が管理するようにしてください。

 

銀行振込は銀行印に注意

 

銀行振込で金銭の受け渡しを行なう場合、受贈者の銀行印が贈与者の銀行印と同じだという場合は銀行印を変更しておきましょう。
なぜなら銀行印が同じであると、実質的には親の口座であるとみなされてしまうことがあるからです。

 

前の項目で「贈与された金銭は受贈者が管理すること」と解説しましたが、贈与者と受贈者が同じ銀行印を使用していた場合、受贈者が管理していた金銭であると認められなくなる可能性もあります。
生前贈与が認められなければ、当然相続税が課せられることになるので注意が必要です。

 

贈与の証拠を残しておくこと

 

手渡しで贈与を行なう場合は、贈与の証拠は確実に残すようにしましょう。
現金を受け取っていたという事実が証明できたとしても、受け取った金銭が贈与されたものか、借金か、判然とさせることは難しいです。

 

全ての項目が記載されている贈与契約書を作成しておけば問題ありませんが、証拠不十分であった場合、年間110万円までの金銭の受け渡しであっても110万円を上回る贈与があったのではないかと嫌疑をかけられてしまう可能性もあります。

 

相続開始からさかのぼって3年以内の贈与は課税対象

 

確かな証拠を残し、正確な贈与を行なっていたとしても、相続開始からさかのぼって3年以内に行なわれた生前贈与は課税対象とされます。

 

相続などにより財産を取得した人が、被相続人からその相続開始前3年以内(死亡の日からさかのぼって3年前の日から死亡の日までの間)に贈与を受けた財産があるときには、その人の相続税の課税価格に贈与を受けた財産の贈与の時の価額を加算します。

出典:国税庁:No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

 

国税庁を参照すると、贈与者が亡くなった日から3年以内に行なわれた贈与は、相続開始時に相続財産とみなされます。
もちろん暦年課税を利用した年間110万円以内の贈与であっても、相続税の課税対象です。
例えば毎年100万円の贈与を受けており、贈与を受け取った年に贈与者が亡くなった場合は合計の300万円が相続税の課税対象となります。

 

そのため生前贈与はなるべく早めに開始しておく必要がありますが、孫に対する贈与だけは対象外となり、相続開始からさかのぼって3年以内の贈与でも課税対象とされません。
また「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」の特例を適用させた場合も同様です。

 

現金による生前贈与は正しく、証拠を確実に

 

現金による生前贈与を行なうために最も大切なことは、「贈与を正しい方法で行なうこと」と「贈与の確実な証拠を残すこと」の2点です。
証拠が残りにくい手渡しよりも銀行振込を選び、親族間であっても贈与契約書は必ず作成するようにしてください。

 

また正しい方法で贈与を行なったとしても、贈与者が金銭を管理していた場合、生前贈与の意味がなくなってしまう可能性もあります。
細やかに注意するべきポイントが多数存在しており、特例などを利用した節税方法を全て把握することも困難です。

 

金銭の受け渡しによる贈与は一見手軽に感じられますが、決して簡単なものではありません。
贈与を行なう前には、相続専門の税理士などに相談するべきでしょう。

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