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2019年05月31日

生前贈与と遺留分の関連性とは?贈与の前に知っておきたい基礎知識

 

生前贈与のときに遺留分を考慮した贈与を行なわないと、相続人同士の間に深い溝を残す可能性があります。
遺留分とは民法によって定められた最低限の相続の取り分のことで、侵害された場合遺留分相殺請求を行なうことができます。
請求が行なわれた場合は調停や訴訟に発展する可能性もあるため、贈与者は法的に定められた取り分を侵害しないように気を配るべきです。

 

生前贈与のメリットとは?

 

節税効果が高い

 

生前贈与を行なう最大のメリットは、高い節税効果が期待できるということです。
贈与には「暦年課税」という課税制度があり、1年間の贈与合計額が110万円以内であれば贈与税の課税対象外となります。

年間110万円の贈与を複数年に渡って行なった場合、贈与税を課せられることなく多くの財産を渡すことができるため、節税対策として頻繁に用いられます。
もちろん相続税の課税対象ともならず、相続財産の総額も減らすことが可能です。

ただし相続開始時点からさかのぼって3年以内に行なわれた贈与は相続財産に含められるため、贈与で相続税の節税を行ないたい場合はなるべく早めに始めるべきでしょう。

 

大幅な控除や特例を適用できる

 

贈与税の基礎控除額は前の項目で解説したように「年間110万円」ですが、その他の控除や特例を適用させることもできます。

例えば配偶者控除であれば、20年以上の婚姻関係のある配偶者に対して行なわれる贈与は基礎控除の年間110万円に加えて2,000万円まで控除額が増えます。
居住用の不動産か居住用の不動産を取得するための資金に限定されてはいますが、2,000万円の控除があれば非課税枠はかなり大きいです。

同じく父母や祖父母から住宅取得のための資金を贈与された場合も、最大3,000万円が控除される特例が適用できます。
住宅取得等資金の非課税特例については住宅のタイプや時期によって控除額が異なり、やはり居住用の住宅を取得することが条件ですが、ケースによっては大幅な節税効果が期待できます。

 

任意のタイミングで財産の受け渡しが可能

 

相続であれば財産が受け渡されるタイミングは被相続人が亡くなった後であり、その他のタイミングで相続させることはできません。
しかし贈与であれば、贈与者と受贈者の好きなタイミングで財産の受け渡しが行なえるというメリットがあります。

 

任意の相手に財産を渡せる

 

贈与では財産を受け渡すタイミングだけでなく、贈与者が渡す相手を好きに選択することができます。

相続であれば法定相続人同士の遺産分割協議によって受け取る財産が決められるため、遺言書が作成されていない場合、被相続人が財産を渡す相手を選ぶことはできません。
特定の相手に対して特定の財産を相続させたいという場合は、生前贈与を利用することをおすすめします。

 

相続時のトラブル回避の効果的

 

生存中の贈与であれば財産を所持している本人の意見を交えることができるため、相続の際のトラブルを回避できる可能性が高くなります。
贈与者・被相続人が協議に加わることによって自身の希望を伝えることもでき、法定相続人の意見を汲むこともできるようになるからです。

 

生前贈与を行なう方法

 

生前贈与を行なうためには?

 

生前贈与を行なうために最低限必要なことは、贈与をする側である贈与者と贈与を受け取る側である受贈者が互いに贈与に対して合意することだけです。
贈与者と受贈者の合意に関しては口約束でも良く、後は財産の受け渡しを行なうだけで成り立ちますが生前贈与としては不十分です。

 

不十分だという理由は口約束だけの贈与の場合、贈与をしたという記録や証拠を残すことができないためです。
第三者に対して贈与があったことを証明できる証拠がなければ、支払う必要のない相続税が課せられる可能性や、相続人同士のトラブルに発展する可能性があります。
贈与があったという証拠を残すために、次の項目で解説する「贈与契約書」を作成しましょう。

 

贈与契約書の作成について

 

「贈与契約書」とは生存中に贈与があった事実を証明するための書類で、第三者に対する証拠となります。
贈与契約書は贈与者と受贈者の名前・住所・押印、贈与した日付、贈与の内容、贈与の方法などを記載して、贈与者と受贈者が同じものを1通ずつ所持します。

 

贈与契約書は正しく記載されていれば高い証拠能力を持ちますが、名前・住所・日付を自筆で記入すること、押印には実印を使うことなどに気を付けてください。

 

現金での生前贈与を行なう方法

 

「暦年課税」を利用して現金を贈与する方法は、生前贈与の中で最も一般的に用いられています。
暦年課税とは1年間の贈与金額の合計が110万円以内であれば、贈与税が課せられないという課税方式のことです。

 

年間110万円以内に収まる贈与を複数年行なうことによって、贈与税が発生しない状態で贈与を行ない相続財産の総額を減らせます。
複数年にわけて贈与を行なう場合は、財産の受け渡しを行なうたびに贈与契約書を作成するようにしてください。

 

現金での贈与には手渡し、銀行振込、通帳の贈与の3種類がありますが、贈与の証拠を残せる銀行振込の利用が良いでしょう。

 

遺留分相殺請求とは

 

遺留分相殺請求について

 

遺留分相殺請求というのは、法定相続人が自らの遺留分となる財産を相続できなかった場合に一定の割合で相続ができることを主張することです。

 

つまり本来であれば5,000万円分の財産を相続できるところ、3,000万円しか相続できなかった場合に、本来の取り分である5,000万円を主張できます。
法定相続人が相続できる財産の割合は民法によって決まっており、遺言書などによって決められた割合が侵害された場合、遺留分相殺請求が行なわれることがあります。

 

調停や裁判などによって行なわれることもありますが、口頭での宣言によって行なうことも可能です。
つまり他の法定相続人に対して、「請求する」という意思表示をしただけでも請求は成立するため、特定の手続きのことではなく「財産の取り分を主張する意思表示」のことだと言えます。

 

「遺留分」とは?

 

そもそも「遺留分」とは、民法によって定められた法定相続人が最低限受け取れる財産のことです。
民法1028条には、法定相続人の立場による割合についても記載されています。

 

第千二十八条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の二分の一

出典:e-Gov:民法

 

つまり法定相続人が父母や祖父母だけであった場合は、法定相続人全員で1/3の割合となり、法定相続人に子どもや配偶者が含まれていた場合は法定相続人全員で1/2の割合となります。

 

請求を行なえる期限について

 

実際に請求を行なおうとするときには期限が定められており、「相続の開始、もしくは減殺するべき贈与や遺贈があったことを認識してから1年間」が期限です。
もし減殺するべき贈与や遺贈があったことを知らなかった場合でも、永久的に請求が行なえるわけではなく、相続開始から10年以上が経過すると請求することができません。

 

遺留分の算出方法

 

各法定相続人が主張できる相続の割合を算出するときは、民法1029条に明記されているとおり、プラスの財産だけでなく借金や未払金などのマイナスの財産を差し引いた合計から算出されます。

 

第千二十九条 遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して、これを算定する。

出典:e-Gov:民法

 

またマイナスの財産である債務以外に「贈与した財産の価額」も加えて算出するので、生前に受けた贈与の額も遺留分に含まれます。

 

生前贈与と遺留分の関係について

 

遺留分相殺請求は生前に受けた贈与の金額も含まれるため、贈与とは深い関連性を持っていることがわかります。
しかし遺留分として含まれる生前贈与については、相続開始時点から見て1年以内に行なわれた贈与か、1年以上前に行なわれた贈与化によって加算されるかどうかが決まり、民法では次のように定められています。

 

第千三十条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。

出典:e-Gov:民法

 

相続開始時点から1年以内に行なわれた贈与に関しては、贈与された全ての金額が基礎財産に含まれ、相続開始時点から1年以上前に行なわれた贈与に関しては、贈与者と受贈者が遺留分の侵害に対して認識があったのであれば基礎財産に含まれるということになります。

 

生前贈与と遺留分が無関係になるケースは、相続開始から1年以上前に贈与が行なわれ、贈与が行なわれたときに贈与者と受贈者の双方が遺留分を侵害していることを知らなかったという場合です。

 

生前贈与における遺留分相殺請求の手続きの流れ

 

相続人や相続財産の調査

 

遺留分相殺請求を行なう前に相続人や相続財産を調査して、遺留分を確定させておかなければなりません。
まずは遺言書の内容確認や法定相続人の把握、相続財産の把握をしましょう。

 

被相続人の誕生から死亡時までの戸籍謄本を見て、全ての法定相続人の把握を行なったら、相続財産の価額を計算して総額を算出します。
相続財産の総額の計算は現金であればそのままの価値で計算しますが、不動産や有価証券などが含まれる場合、それぞれの価額を算出して総額を求めてください。

 

遺留分相殺請求の通知を送付

 

請求は口頭で行なっても成立しますが、請求先の人物に対して通知をすることをおすすめします。
通知を送付するときには配達したという証拠が残る「内容証明郵便」で送ると良いでしょう。

 

内容証明郵便が推奨される理由は、遺留分相殺請求の時効に関係してくる可能性があるからです。

 

請求先の相手と交渉

 

請求を行なう旨の通知を送付したら、請求先の人物との交渉によって解決を試みます。
法的な場での交渉ではありませんが、交渉の時点で請求先の人物と話がまとまった場合遺留分相殺請求は完了です。
後のトラブル防止のために「和解書」や「合意書」などを作成して、交渉の内容を書面に残しておいてください。

 

ただし交渉が不成立になる可能性がある場合や、法的な場での争いが必要になる可能性がある場合は交渉の内容を録音しておくと後々役立ちます。

 

申立書の作成と調停の申立て

 

請求先の人物との交渉が破綻した場合、家庭裁判所で調停を行なうことになるため、調停申立書の作成をして調停を申し立てます。

 

調停申立書を作成するためには、裁判所の公式サイトからテンプレートをダウンロードできるのでテンプレートを印刷して作成するとわかりやすいです。
「遺留分減殺による物件返還調停」のページに「家事調停申立書」という項目があり、書式の記入例も掲載されているので内容に従って必要なところを埋めていきます。

 

調停申立書を作成したら、請求先の人物の住所を管轄している家庭裁判所に申し立てます。
ご自身の住所を管轄している家庭裁判所ではないので、注意してください。

 

調停

 

調停の申立てが受理されたら、調停の段階に入ります。
調停の日程は家庭裁判所によって決定され、申立人と請求先の人物に対して呼び出しが行なわれます。

 

実際の調停では申立人と請求先の人物が顔を合わせることはなく、それぞれの調停室が用意され、調停委員が互いの主張を伝言するという形が取られます。
調停委員を挟んだ交渉で和解できれば、書記官が公正証書や判決と同程度の効力を持つ調停調書を作成して終了です。

 

訴状の作成と訴訟の提起

 

調停で交渉が決裂した場合は訴状を作成し、訴訟を提起して、訴訟を行なう段階に入ります。
訴状も裁判所の公式サイトに記入例があるので、「訴訟物の価額」や「請求の趣旨」、「請求の原因」などの必要事項を記入していきます。

 

訴状の提出は被相続人の最後の住所がおかれていた土地を管轄する裁判所に対して行ないますが、請求する金額が140万円以下であれば簡易裁判所、140万円を超過する場合であれば地方裁判所に提出してください。

 

訴訟

 

裁判所に訴状が受理されると調停のときと同じように裁判所が訴訟の日程を決め、当事者両方に対して呼び出しが行なわれます。
訴訟は調停のときとは異なり、当事者2人が証拠から立証できる主張を行なうことによって進められ、最終的な判決が下されるという流れです。

 

ただし訴訟においても当事者による交渉の場は設けられ、交渉の場を「和解期日」と呼んでいます。
和解期日では裁判官がいない場で交渉が行なわれ、当事者間で和解が成立した場合は判決が下される前であっても和解調書が作成されて訴訟は終了です。

 

判決・不服申立て

 

和解期日で交渉が決裂した場合は、裁判所からの判決によって結果が出ます。
もしも判決に不服がある場合は控訴を行ない、控訴の判決にも不服がある場合は上告を行なうことが可能です。

 

不服申立てを行なうためには期限があり、判決書が送付されてから2週間以内に行なわなければなりません。

 

遺留分回収

 

交渉、調停、訴訟、控訴、上告のいずれかで結論が出されれば、遺留分の回収に進みます。
ただし請求先の人物が相続財産を渡さない場合は、民事執行などの手続きが行われる可能性もあります。

 

民事執行とは下された判決に基づいて権利を執行するための手続きで、請求先の人物の財産を差し押さえて、請求を行なった人物に分配するというものです。
「強制執行」や「担保権の実行」が民事執行に該当します。

 

遺留分相殺請求は発生させないことが一番

 

複雑でありトラブルの原因になる遺留分相殺請求は、発生させないことが一番です。
遺留分相殺請求とは自分が相続できる財産の割合を請求する手続きのことですが、手続きの流れは非常に複雑です。
さらに請求を行なうときは、調停や訴訟などの法的な場によって行なわれることが多く、親族間の深い溝を残す結果にもなります。

 

請求を発生させないようにするには、生前贈与の際に法的に決められた相続の割合を侵害しないように気を配るべきでしょう。
生前の贈与には高い節税効果があり、任意のタイミングで任意の相手に財産を渡せるというメリットがありますが、法的な相続の割合を侵害することはトラブルの元になるため相続の専門家に相談することをおすすめします。

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