遺言書の有無は、相続において大変重要な点です。
相続人の話し合いの席で、一番の争点になるのは、残された遺言状が正式なものなのか、どうかでしょう。
今やデジタル社会となり、遺言状の形も様々になってきています。
「終活」「エンディングノート」という言葉もよく耳にするようになりました。
ここでは、残す場合も、残された場合も知っておくべき「遺言状」についてご説明させていただきます。
目次
正しい遺言状とは
正式に認められるには、書き方にも決まりがあります。
まずは、自分の直筆で作成をする場合です。
- ①必ず直筆で書かなければいけません。
- ②署名、捺印が必須です。
- ③作成日を記入しましょう。
パソコンやワープロでの作成は、本人のものであるという証明ができない為無効です。
ここで、重要なポイントは捺印です。
最近、注目を集めた裁判の事例で、捺印ではなく、サインをした事例がありました。
現在もまだ係争中ではありますが、原則として、朱肉を使用した押印が必ず必要だということを覚えておきましょう。
一旦作成した遺言状を後日、作成しなおすことも少なくはありません。
遺言書は、最も新しい日付、つまり最後に作成された内容が遵守されますので、作成日の記入は大変重要なポイントです。
公正証書という方法も
直筆での作成に不安がある場合や、作成後の保管に不安がある場合、遺言書に書かれた内容を必ず守って欲しい場合には、公正役場へ依頼をしましょう。
公正役場の利用にあたっては、所定の手数料が発生しますが、作成にあたって、内容や記述方法に不備がないかを精査してもらえるうえに、保管に関しても原本を公正役場で保管してもらえるという大きなメリットがあります。
公正役場へ預けた遺言書はたとえ家族であっても無断で閲覧、書き換え、取り下げは不可能ですので、故人の遺志がきちんとした形で守られます。
遺言書作成には保証人も必要
ただし、作成に当たっては、保証人2名を立てることが条件となります。
この保証人は、将来、相続が生じる人間は引き受けることができません。
将来、相続関係の生じない、信頼できる間柄の人に依頼をしましょう。
遺言書として認められない事例も・・・
認められない事例は
遺言書として認められない事例として
- ①ビデオで撮影したもの(動画など)
- ②メールで送信された文章
- ③パソコンやワープロで作成された文章
- ④録音された音声
- ⑤署名、捺印の無いもの
などがあげられます。
もちろん、裁判の場では、故人の遺志を尊重することを最優先に判決が下るのですが、
ねつ造、加工が可能なものは正式な遺言書としては認められないケースが多く見られます。
口頭での遺言書は??
口頭は?
突然の出来事で、事前に遺言書を残すことができない場合ももちろんあることでしょう。
故人の意思を、最後に「口頭」で確認した場合には「遺言」として認められるのでしょうか?
実は、口頭での遺言は法律的には「無効」とされています。
ただし、発言の時点で3人以上が同席していて、証人となる場合には、専門家への相談や裁判をへて何等かの有効性を見出せる可能性もあります。
たとえば、相続の話し合いの席で、「直筆の遺言書」と「口頭での遺言」があった場合、「口頭の遺言」の方がより本人の意思に沿っている場合であっても、正式な形で作成された遺言書の方が尊重されるのです。
病気などの理由から、書面で作成した遺言書の直筆での訂正が難しい場合もあるでしょう。
そのような時は、口頭での聞き取りだけでは、無効とされてしまうので、証人を立て、代理で記述してもらう方法もあります。
遺言書の訂正が生じる際には、たとえ家族であっても、デジタル機器を安易に利用するのではなく、正式な手順を踏みましょう。
一般的な家庭であれば、公正役場を利用しての遺言書の管理はあまり行われていませんが、
自営業や会社を経営している場合や保有財産に不動産が多く含まれている場合などには、この限りではありません。
特に、財産分与にあたって、不動産の価値は、相続人が考えている価値から大きくかけ離れた評価が下される場合が多いものです。
財産を分けるにあたって、不公平感が生じやすい点ですので、公正証書という形で残すことが、残された家族間でのもめごとを回避する一つの手段でもあります。
もし遺言状を失くしてしまったら?
作成したはずの遺言状が見つからない、保管場所が分からない、失くしてしまったということも無くもありません。
このようなとき、公正役場を利用している場合には、原本が保管されているので、問題なく相続の話合いが進むことでしょう。
しかし、自宅で保管していた場合、残念ながら見つけ出す以外の方法はありません。
相続税の納期限となる10カ月以内に財産分与の話し合い、納税を済ませる必要があるからです。
特に、家族間で財産分与の話合いを終えた後で、遺言書が見つかった場合、再度の話し合いは到底、円滑には進まないことでしょうから、遺言書があると確信がある場合には、出来るだけ早く見つけましょう。
もし、遺言書が見つからない場合には、法律で定められた配分方法により財産は分配されるので、相続が滞ることはありません。
- 相続で一番の争点になるのは残された遺言状が正式なものなのか
- 正式に認められる遺言書とは
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