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2019年04月23日

生前贈与での贈与税の計算方法と非課税になる条件

贈与は年間110万円までの控除が適用されるため、複数回に分けて生前贈与を行なっておけば、相続する財産の総額を減らせます。
また、贈与税が非課税になる特例も用意されており、相続税の節税に効果的です。
ただし、「生前贈与で必ず納税額が少なくなる」というわけではないため、制度を理解し、正しい選択をするようにしてください。

生前贈与の税金の計算方法

贈与税の計算式

生前贈与の税金は、1月1日から12月31日までの1年間の贈与額の合計から算出され、次のように計算されます。

贈与税額 = (1年間の贈与額合計 – 110万円) × 税率 – 控除額

贈与税は年間110万円までの控除が利用でき、生前贈与の合計金額から差し引くことができます。
年間110万円までの控除を差し引いた贈与額の合計に、贈与税の税率を乗じて、控除額を差し引いた金額が実際に納付する税金の金額です。

贈与税の税率と控除額

贈与税の税率と控除額は下記のように定められています。

父母や祖父母から直系尊属への贈与

左記以外の贈与

課税額

税率

控除額

課税額

税率

控除額

200万円以下

10%

200万円以下

10%

300万円以下

15%

10万円

400万円以下

15%

10万円

400万円以下

20%

25万円

600万円以下

20%

30万円

600万円以下

30%

65万円

1,000万円以下

30%

90万円

1,000万円以下

40%

125万円

1,500万円以下

40%

190万円

1,500万円以下

45%

175万円

3,000万円以下

45%

265万円

3,000万円以下

50%

250万円

4,500万円以下

50%

415万円

3,000万円超

55%

400万円

4,500万円超

55%

640万円

参考:国税庁:財産をもらったとき

例として、父から子へ、年間1,000万円の生前贈与が行なわれた場合、贈与税額は次のとおりに算出され、贈与に課せられる税金は231万円です。

(1,000万円 – 110万円) × 40% – 125万円 = 231万円

贈与税が非課税になるケース

年間110万円までの贈与

暦年課税の仕組みを利用すれば、年間110万円までの贈与であれば税金が課せられません。
暦年課税の計算方法では、基礎控除額として110万円を差し引くことができるため、控除額で贈与総額が0円になるからです。

相続税対策としてよく利用される方法で、毎年110万円以下の生前贈与を複数回に分けて行なえば、相続税も贈与税も支払うことなく財産を相続させられます。
ただし、毎年同じ時期に、同じ金額の財産の贈与を続けていた場合などは、「定期贈与」とみなされて、全ての贈与を1年間で行なった場合の税金が課せられることもあります。

定期贈与とみなされると、相続税以上に税金が高額になる可能性もあるため、生前贈与は慎重に行ないましょう。

相続時精算課税制度

「相続時精算課税制度」とは、2,500万円までの贈与が非課税となる制度です。

ただし、「相続時精算課税制度」を利用して生前贈与を行なった財産は、相続のときに、相続財産の中に含めて相続税の計算をしなければなりません。
そのため、条件によっては、生前贈与をしたことによって、より多くの税金が課せられる可能性もあります。

「相続時精算課税制度」を利用するかどうかは、生前贈与予定の財産の価値が、相続のときに上昇しているか、下落しているかによって判断します。
相続のときに、生前贈与をしたときよりも価値が上がっているとすれば、適用させた方が節税になります。
反対に、相続のときに価値が下落しているとすれば、生前贈与よりも相続をするべきです。

贈与税の配偶者控除

「贈与税の配偶者控除」は、夫婦間で不動産を贈与した場合、2,000万円までが非課税となる控除です。

贈与する住宅は居住用でなければなりませんが、不動産としての贈与ではなく、不動産の購入資金として現金を贈与した場合にも適用されます。
ただし、不動産、もしくは不動産購入資金の贈与を受けた場合、翌年の3月15日までに対象の不動産に住んでいて、その後も住み続けなければいけません。

「贈与税の配偶者控除」を利用するには、夫婦の婚姻歴が20年以上必要で、同じ配偶者からの贈与で複数回適用させることは不可です。
もし、贈与税の配偶者控除を適用させる不動産を贈与した年度内に、贈与した人が亡くなったとしても、相続財産には含まれません。
また、控除を適用した贈与額が0円の計算であっても、贈与税の申告は必要です。

住宅取得資金等の贈与

「住宅取得資金等の贈与」は、父母や祖父母から住宅の購入や新築のための資金援助として受けた贈与が、最大1,200万円まで非課税になる制度です。
住宅の増改築でも利用できます。
非課税となる贈与額は、住宅の種類や年度によって次のように変わりますが、平成33年12月31日で終了する予定なので、検討されている方は早めに準備を始めましょう。

新築等に係る契約の締結日

消費税8%

消費税10%

省エネ住宅

左記以外の住宅

省エネ住宅

左記以外の住宅

平成28年1月1日~平成32年3月31日

1,200万円

700万円

3,000万円

2,500万円

平成32年4月1日~平成33年3月31日

1,000万円

500万円

1,500万円

1,000万円

平成33年4月1日~平成33年12月31日

800万円

300万円

1,200万円

700万円

参考:国税庁:No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

平成31年3月の現時点では最大1,200万円まで税金が課せられませんが、消費税率10%で住宅を購入、新築した場合は、最大3,000万円までが非課税となるので、かなり大きな節税効果が期待できます。

適用させるための条件は、贈与を受ける人が、贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上であり、年間の所得が2,000万円未満であることです。
また、購入する住宅にも、次のような条件が設けられています。

・床面積が50平方メートル以上240平方メートル以下
・床面積の1/2以上が贈与を受けた人の居住用であること
・新築、もしくは築20年以内、または一定の耐震基準を満たしていること

「住宅取得資金等の贈与」を適用させて購入、新築をした場合、翌年の3月15日までに対象の住宅に住み始めなければいけません。
また、住宅の売り主や工事の発注先が、親族や配偶者の場合は非適用です。

教育資金の一括贈与

「教育資金の一括贈与」は、父母や祖父母から教育資金として受けた贈与が、学校での利用なら1,500万円まで、学校以外の塾などでの利用なら500万円まで非課税となる制度です。
贈与を受ける人は、贈与する人の直系の親族で、30歳未満でなければいけません。

「教育資金の一括贈与」を適用する場合、贈与された教育資金は「教育資金口座」で管理しなければならず、口座から資金を引き出した場合は、教育に使用した旨の領収書を金融機関に提出してください。
また、平成31年3月31日までの贈与に適用され、贈与された教育資金は、贈与された年度内に使い切る必要があります。

結婚・子育て資金の一括贈与

「結婚・子育て資金の一括贈与」は、父母や祖父母から受けた贈与が、妊娠、出産、子育てのための利用なら1,000万円まで、結婚のための利用なら300万円まで非課税となる制度です。
贈与を受ける人は20歳以上50歳未満に限られます。

「結婚・子育て資金の一括贈与」を適用させる場合、贈与された資金は「結婚・子育て資金口座」にて管理しなければならず、資金を引き出したときには、結婚や子育てのために使用した旨の領収書を金融機関に提出します。
「教育資金の一括贈与」と似た制度ですが、期限も同様で、平成31年3月31日までの贈与が対象です。

障害者への贈与

障害者に贈与を行なった場合、特別障害者への贈与で6,000万円まで、特別障害者以外の障害者への贈与で3,000万円までが非課税とされます。
税金が課せられない対象額が非常に大きいため、相続時の税金を軽減させるための生前贈与として大変効果的です。
正式には「特定贈与信託」と呼ばれています。

「特定贈与信託」を適用させるためには、金銭、有価証券、預金などの財産を信託銀行に信託します。
信託銀行に信託された資金は、贈与を受けた障害者の生活費や医療費などに充てられ、定期的に支払われる仕組みです。

本当に生前贈与で得をするのか?

生前贈与で得をするかどうかは、所持している財産や相続人、相続の配分などによって変わるため、「生前贈与で必ず得をする」とは言い切れません。
ご紹介したように、非課税で贈与を行なえる特例が多くありますが、同じように、相続税にも非課税で相続ができる特例があります。

また、「相続時精算課税制度」を適用させた場合、対象の財産はその後通常の贈与にはできなくなるため、相続する財産の今後の価値によって得をするかどうかは変化します。

年間110万円以内の生前贈与で相続する財産を減らしておけば、支払うべき税金は少なくなる可能性が高いですが、相続税と贈与税の総額を計算して、最も適切な選択をすることが大切です。

生前贈与で迷ったら専門家に相談しよう

生前贈与では年間110万円までの贈与であれば税金が課せられないため、複数回に分けて贈与を行なえば、相続させる財産の金額を減らすことができます。
また、贈与税が非課税となる制度や特例も用意されており、上手に利用すれば、さらなる節税が可能です。

ただし、生前贈与で必ず納税額が少なくなるというわけではなく、相続と贈与の税金の総額を計算して、最も適切な選択をしなければなりません。
生前贈与をするべきか迷ったら、相続専門の税理士などに相談することが最善です。

代表プロフィール

税理士法人エール
永江将典

近畿税理士会所属。税理士法人エールの代表税理士を務める。
相続の申告をする方のストレスを減らしたいという思いで2012年で開業。

生前対策や相続税申告だけでなく、
遺言書・遺産分割協議書の作成や成年後見人、相続登記など、様々な相続事案に対応。
相続に関するすべてのことが解決できるサービスを提供している。

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