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2019年04月23日

孫に対して生前贈与をすれば、相続税を節税することができます。ただ、無条件にお金を送ればそれがすべて生前贈与になるのか?というとそうではないので十分に注意していきましょう。

ここでは、生前贈与でのメリットや注意点などについて解説するので、参考にしてみてくださいね。

生前贈与の節税について

生前贈与とは、その名の通り、生きているうちに財産を贈与することを言います。
生前贈与をしない場合には亡くなった後に相続という形で財産が分配されていく形になるのですが、この時に問題になるのが税金です。

生前に贈与する場合は贈与税、亡くなった時に相続される際には相続税がかかります。
しかし、事前に生前贈与を行なっておくと無駄な税金の発生を抑え、より多くの財産を子どもや孫に残していくことができるのです。

節税効果が非常に大きいので、効果的に節税対策をするためにも孫への生前贈与について詳しくみていきましょう。

なぜ贈与すると節税になる?

大きな理由は、財産を贈与することによって相続する際の財産が減るからです。
子どもに贈与する場合も同じことが言えますが、孫への贈与では用途を工夫することによって子どもに相続する際以上に大きな節税効果を果たしてくれることもあります。

何も対策を取らないでいると無駄な相続税を支払うことにもなってしまうので、賢く節税したいと考えている際にも生前贈与について検討してみるのがおすすめです。

生前贈与する際の注意点

かわいい孫に対してできるだけ多くの財産を残したいと考えている方もいるでしょう。
ただ、お孫さんがまだ小さかったりすると、お金のこともよくわからず、受け取っても正しい方法で使えるとは限りません。
そのため、「孫には贈与していることを知らせずにおこう」と考えてしまう方もいるようです。

しかし、気をつけなければならないのが孫への贈与にはお互いの合意が必要だということ。
例えば、おじいさんが孫名義の通帳を作り、そこに孫への贈与という形でお金を入れていたとしても、受け取る本人がそれを知らなければ無効となってしまいます。

この場合は、財産が相続されていない扱いになり、その金額も含めて財産として相続税が計算されることになるのです。

言い換えると、贈与であると認めてもらうためには、本人が受け取ったお金を自由に使える状況で管理しているか?ということがポイントになります。
あまりにもお孫さんが小さくて自分で財産を管理できないような場合は生前贈与を始めるタイミングを遅らせるなどの対策をとりましょう。

その上で、財産の贈与に関する取り決めを行ない、契約書を残しておいたほうが安心です。

毎年一定の金額は同じ時期に贈与するのはNG

贈与税は毎年110万円までなら基礎控除が適用され、非課税で贈与を受けられるのが魅力です。
これを「暦年贈与」と言います。
そのため、生前贈与を行ないたいと考えた時にルールを作り、「毎年1月に非課税の範囲となる金額として100万円を贈与しよう」というように、非課税の範囲内で一定額を贈与する計画を立てる方もいるはず。

しかし、このように同様の金額と時期を固定してしまうと暦年贈与ではなく、税金・税率の扱いが異なる「連年贈与」として扱われてしまう可能性があります。

これは、例えば10年間にわたり100万円ずつ贈与したような場合には「初めから1,000万円を贈与する契約であり、それを分割で贈与した」扱いになり、総合的な金額である1,000万円に対して課税されてしまうものです。

1年の控除の上限額は110万円までとなっているので、連年控除と判断されてしまった場合にはそれを超えた分の890万円に対して贈与税がかかってしまいます。

連年贈与と判断されないためには年によって振り込み時期や金額を変えたり、その年ごとに贈与契約書を作成するなどの方法が効果的です。
また、贈与契約書には自筆で署名と実印での押印をし、公証役場で確定日付を付してもらうと更に確実になります。

このあたりについてもなかなか判断が難しいポイントです。
連年贈与ではないか?と指摘されてしまった時のことを考えておくと、専門家に相談しながら対策を取っていたほうが安心だといえるでしょう。

生前贈与で財産を渡すメリット

生前贈与をする大きなメリットは、相続税が減るということです。
それに加え、孫への贈与だと贈与税の対象として扱われる期間においてもメリットがあるので押さえておきましょう。

法律では不正に相続税を減らすのを防ぐために、亡くなった日から見て3年以内に受けた贈与は相続財産に持ち戻されて課税価格に含まれてしまいます。
例えば、多く財産を持っている方が亡くなる直前に相続税を減らす目的で慌てて生前贈与をしたとしても、大きな節税効果は期待できないということですね。

しかし、孫に対してはこのルールが適用されず、仮に亡くなる前日に贈与をしたとしても有効となるのです。節税効果が大きい方法でもあるので、検討してみましょう。

孫に生前贈与をするのなら3つの方法がある

生前贈与をしようと思ったらどのような方法があるのでしょうか。
代表的な3つの方法についてみていきます。

教育資金として一括贈与する

孫への生前贈与として教育資金という形で贈与する場合、1,500万円までは非課税になります。
「教育資金一括贈与」と呼ばれるものであり、1人につき1,500万円なので、孫が2人いれば3,000万円まで認められるのが特徴です。

ただ気をつけなければならないのが、例えば母方の祖父母と父方の祖父母の両方から教育資金の贈与を受ける場合、受け取り額で判断されるということ。
それぞれから1,000万円ずつ贈与されるようなケースでは2,000万円となり、非課税の上限である1,500万円を500万円オーバーしてしまうので、この500万円が課税対象となります。

ただ、こちらは孫に対する生前贈与ということになるので、直系尊属でなくてはなりません。
叔父や叔母といった立場の人が贈与しても非課税ではないので気をつけておきましょう。

あくまで教育に使うお金である

教育資金として受け取っているお金なので、教育に使わなければなりません。
将来のことを考えて節約し、貯金に回そうとしている方もいるかもしれませんが、30歳までに使わなければならないと年齢制限が定められており、使い切れなかった場合には30歳になった年の贈与税課税価格に算定される形になってしまうのです。

贈与する側としてはかわいい孫のことを思ってできる限りの贈与をしたとしても、使い切ることができずに孫が思いもよらない金額を納税しなくてはならないことになると大変です。このあたりのことをお互いに理解した上で金額を検討するようにしましょう。

また、「教育以外のことに使ったお金を教育に使ったことにすれば良いのでは?」と感じるかもしれませんが、何でもかんでも教育のための費用として認められるわけではなく、レシートや領収書といった証明書が必要になるので嘘は付けません。
万が一、嘘をついてそれがバレてしまうと大変なので気をつけておきましょう。

習い事に使える資金は500万円までに限定

1,500万円の贈与を受けたと仮定して、「学校への資金として500万円、習い事に1,000万円を振り分けよう」と考えてしまう人もいますがこれはできません。
学校への資金を1,500万円とすることは可能なのですが、習い事には500万円までしか回せないと決められているからです。

合計で1,500万円までとなっているので、1,500万円のうち習い事に使えるのが500万円という形になります。

暦年贈与と併用が可能

教育資金の一括贈与を受けたとしても暦年贈与と併用することができます。
暦年贈与は年間に110万円までとなっているため、これらを併用し、非課税になるのは最大1,610万円までです。

住宅取得資金として贈与

孫の年齢が20歳以上なのなら、住宅取得資金贈与も検討できます。
これは、2015年から2021年までの間に住宅を取得するための費用を贈与された場合に適用になるもので、法律によって認められている金額まで譲与税が非課税になる特例です。

具体的にいくらまで非課税になるのかについてみていきましょう。
消費税が8%期間中は次の通りです。

契約の締結期間

省エネ等の住宅

左記以外の住宅用家屋

平成28年1月1日~平成32年3月31日

1,200万円

700万円

平成32年4月1日~平成33年3月31日

1,000万円

500万円

平成33年4月1日~平成33年12月31日

800万円

300万円

続いて、消費税が10%になった後は以下の通りとなります。

契約の締結期間

省エネ等の住宅

左記以外の住宅用家屋

平成31年4月1日~平成32年3月31日

3,000万円

2,500万円

平成32年4月1日~平成33年3月31日

1,500万円

1,000万円

平成33年4月1日~平成33年12月31日

1,200万円

700万円

贈与を受ける方が次の条件が定められているので、こちらも確認が必要です。

  • 子や孫といった贈与者の直径の卑属(垂直に繋がる血族)である
  • 贈与を受ける年の1月1日時点で20歳以上
  • 贈与を受ける年の所得税に関わる合計所得金額が2,000万円以下
  • 翌年3月15日までに住宅を新築・取得し、居住する

特例を受けた結果贈与税が0円になった場合でも必ず申告が必要なので、この点も注意しておきましょう。

孫への生前贈与で賢く節税

生前贈与の中でも、孫へ贈与することを検討している方のために、具体的な方法やポイントについてご紹介しました。
注意しなければならないこととして、贈与の方法を間違えると非課税のはずのポイントが課税されてしまうこともあるため、専門家に確認しながら進めていったほうが安心です。

また、とにかく高額の贈与をする方もいますが、結果的に孫が支払わなければならない税が大きくなり、困らせてしまうこともあるので、この点も注意してみてくださいね。

代表プロフィール

税理士法人エール
永江将典

近畿税理士会所属。税理士法人エールの代表税理士を務める。
相続の申告をする方のストレスを減らしたいという思いで2012年で開業。

生前対策や相続税申告だけでなく、
遺言書・遺産分割協議書の作成や成年後見人、相続登記など、様々な相続事案に対応。
相続に関するすべてのことが解決できるサービスを提供している。

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