2017年01月22日
相続税の申告をサポートする中で、よく登場するのがこの代償分割です。今月も1件、代償分割の相談をいただきました。
代償分割とは
相続人全員の遺産分割の結果、法定相続分以上の財産を取得した相続人がいたとします。
その際、例えば相続人間で不公平感が残らないよう、他の法定相続分より少ない財産を相続した相続人に対して、金銭等を支払うことで法定相続分との不足額を補う遺産分割の方法があります。
専門用語を使うとわかりにくいですよね。具体例を使って説明します。
父と子供として2人兄弟がいたとします。
父親の財産は、自宅5000万円、現金3000万円があったとします。
自宅は2つにわけることができません。
そこで、自宅は長男が相続し、現金はすべて弟が相続したとします。
相続上の法定相続割合に基づけば、兄が4000万円、弟が4000万円相続できるはずです。このため、弟は本来法律上取得できる金額より1000万円少ないことになります。
そこで、このような場合に兄が弟へ1000万円現金で自分のポケットから支払うことにしたとします。
すると、兄弟で受け取る財産額がともに4000万円となります。このように、法定相続割合にならない相続財産の分割をした場合に、不公平感が出ないよう金銭等で補う遺産分割の方法を代償分割と呼びます。
代償分割を行う場合の注意点
上記の例では、兄が自分のポケットマネーから弟へ1000万円渡しています。
この取引だけをみると、兄から弟への贈与であり、本来であれば贈与税を払う必要があります。
しかし、代償分割に伴う贈与に関しては、遺産分割協議書内に代償分割の対価として明記しておくことで、贈与税の課税対象から除外されます。仮に遺産分割協議書に記載がないまま、代償分割を行い金銭を贈与した場合。税務調査がきた際に単純な贈与と指摘されても対抗することができなくなってしまいますので、必ず遺産分割協議書へ記載しましょう。
参考情報
No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算
2017年01月22日
祖父、父、子供の3人がいたとします。
この中で、父が最初に亡くなったとします。
祖父が亡くなった際、本来であれば父が相続人となるはずですが、すでに亡くなっています。
このとき、祖父の財産を孫が相続することになります。これを代襲相続と呼びます。
相続人の範囲や法定相続分は、民法で次のとおり定められています。
相続人の範囲
死亡した人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。
第1順位
死亡した人の子供
その子供が既に死亡しているときは、その子供の直系卑属(子供や孫など)が相続人となります。子供も孫もいるときは、死亡した人により近い世代である子供の方を優先します。
第2順位
死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)
父母も祖父母もいるときは、死亡した人により近い世代である父母の方を優先します。
第2順位の人は、第1順位の人がいないとき相続人になります。
第3順位
死亡した人の兄弟姉妹
その兄弟姉妹が既に死亡しているときは、その人の子供が相続人となります。
第3順位の人は、第1順位の人も第2順位の人もいないとき相続人になります。
なお、相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます。また、内縁関係の人は、相続人に含まれません。
相続人としての欠格事由
民法891条では、相続人の欠格事由が定められています。欠格事由に該当する相続人は、裁判などの手続きを要せず当然に、相続の権利を失います。
第891条
次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
2017年01月22日
飛行機の墜落事故で親と子供が不幸にして亡くなった場合。
親が先に死んだのか、子供が先に死んだのか、正確に把握することは困難です。
また、仮にどちらが先に死んだかを明らかにできた場合。同時死亡の推定がなかった場合、以下のような不都合が起こります。
例えば、父親が先に亡くなった場合。
父親の相続財産を子供へ相続することになります。そして、子供もすでに亡くなっているため、父親・子供以外の相続人への相続が発生することになります。
このように、亡くなった子供が相続財産を引き継いだとしても、実際には相続財産が子供のものになり自由に利用できたわけでもありません。にもかかわらず、相続税だけが2回も払うことになるため、今回のようなどちらが先になくなったかの把握が困難なケースでは同時死亡の推定が成立するものとし、父親・子供間の相続は発生しないことと取り決められています。
民法第32条の2により規定されています。
2017年01月22日
特別縁故者とは、相続人に財産を引き継ぐはずの被相続人の存否が不明な場合に、
1.被相続人と生計を同じくしていた方
2.被相続人の療養看護に努めた方
3.その他被相続人と特別の縁故があった方
が家庭裁判所に申し立てをすることにより、相続人の財産を引き継ぐことができる制度です。
法定相続人がいない場合、本来はどうなるか?
法定相続人が1人も存在せず、遺言もない場合、相続人の全財産はは最終的には国のものとなります。しかし、場合によっては国がもらい受けるよりも、特定の人に相続財産を引き継ぐほうがよいと判断される場合もあります。
被相続人との間に特別なつながりがあった者(民法958条の3)の具体例
遺言はないが自分が死んだら財産を譲るという約束をしていた者
被相続人から頻繁に援助を受けていたなど、生前、密接な交流が続いていた者
遺言で指定されていた者
特別縁故者に該当するかどうかは、裁判所の判断になります。
特別縁故者の申請手続きに関しては、こちらの裁判所HPに詳しく記載されています。
裁判所公式HP
2017年01月22日
あまり知られていない生前贈与の特例として、特別障害者不要信託制度というものがあります。
子供が特別障害者(特定障害者とは、1.特別障害者及び2.障害者のうち精神に障害のある方をいいます。)に該当する場合、親としては自分が亡くなった後のことが心配だと思います。また、健常者に比べ、一人で生活していくことに困難が予想されるため生前の贈与に関して優遇措置が取られています。
特定障害者(こめ)の方の生活費などに充てるために、一定の信託契約に基づいて特定障害者の方を受益者とする財産の信託があったときは、その信託受益権の価額のうち、特別障害者である特定障害者の方については6,000万円まで、特別障害者以外の特定障害者の方については3,000万円まで贈与税がかかりません。
この非課税の適用を受けるためには、財産を信託する際に「障害者非課税信託申告書」を、信託会社を通じて所轄税務署長に提出が必要です。
特別障害者不要信託制度
2017年01月22日
毎年110万円までの贈与であれば、贈与税がかからないことは広く知られています。
相続税対策の一番有名な方法ですね。
そこで、こう考える人がいます。
毎年110万円づつ贈与すればいいなら、例えば最初から10年かけて110万円ずつ1100万円を贈与しよう!
と決め、贈与を受ける人とも合意したとします。
このような毎年一定の贈与をすることを決定してしまうと(これを定期贈与と呼びます)、
1年あたり110万円の贈与であっても、意思決定した際に1100万円の贈与があったとみなされます。
すると年間110万円の贈与非課税枠を超えるため、贈与税が発生してしまいます。
定期贈与と言われないための対策
毎年、その都度贈与するとを決定し、贈与契約書を作成し、それに基づき贈与を行えば定期贈与とされることはありません。
国税庁のホームページにも明記されていますので、参考にしてみてください。
Q1.親から毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受ける場合には、各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下ですので、贈与税がかからないことになりますか?
2017年01月22日
相続の単純承認とは、相続について相続放棄または限定承認の手続きを行わなかった場合、被相続人のすべての財産を相続することを承認したものとみなされる制度です。
この単純承認と関係するものとして、相続放棄と限定承認があります。
相続放棄とは、文字どおり、被相続人の相続財産を一切、相続しないという方法です。
相続を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ必要な手続きを行うことで、相続放棄することができます。
亡くなった方の財産よりも、借金などが多い場合は、相続放棄したほうが負債を引き継がなくていいため、得をします。このようなケースで利用されます。
2016年09月20日
故人から相続した財産が、故人が別の者から10年以内に相続した財産で、前の相続のときに相続税を課税されていた場合には、今回の相続税額から一定額を控除するという規定です。
短期間に相続が重なると、同一の財産にかかる相続税の負担が重くなるため、後の相続税額を軽減する目的があります。
~適用要件~
以下の要件を全て満たす場合に適用
①今回の相続の相続人であること
②今回の相続開始前10年以内に開始した前の相続で、故人が財産を相続していること
③②の相続で相続税を課税されていること
2016年09月19日
故人が生前に所有していた土地のうち、建物などの ”敷地” として利用されていたものを”宅地”と言い、故人が亡くなられた前後の利用・所有などの条件に応じて、評価が減額されます。
なお、建物などの施設以外にも、コインパーキングとして利用する土地が”アスファルト舗装”されている場合でも”宅地” となります。
~減額範囲~
①故人の居住用だった土地 ・・・ 330㎡まで80%を減額
③故人の事業用の敷地だった土地 ・・・ 400㎡まで80%を減額
②故人の賃貸不動産用だった土地 ・・・ 200㎡まで50%を減額
~要件~
①居住用 ・・・ 配偶者が取得又は親族の取得で亡くなられた後10か月は居住
用として所有
②事業用 ・・・ 親族の取得で亡くなられた後10か月は会社の敷地として所有
③賃貸不動産用 ・・・ 親族の取得で亡くなられた後10か月は賃貸不動産用の
敷地として所有