“相続税の計算をする際には、生前贈与された財産の内、一定の財産を相続財産に加算しなければいけません。一定の財産とは、被相続人が死亡した事を相続人が知った日(相続開始日)から遡って3年以内に受け取った暦年課税に係る財産を言い、加算される際の金額は受け取った時の価額となります。なお、受け取った財産の価額が暦年課税に係る110万円の非課税枠の範囲であっても、加算対象となりますので注意して下さい。
この制度は、被相続人が死亡する直前に生前贈与を行う事で相続税を回避する事を防ぐ目的があるため、加算対象となる人は法定相続人や遺贈を受ける人のみとなります。そのため、孫の親(被相続人の子ども)が相続開始日に既に死亡している、あるいは相続欠格事由や廃除された相続人に該当する時は、孫は代襲(法定)相続人となるため相続開始日前3年以内に受け取った財産は対象となります。さらに、被相続人が遺言で孫に財産を渡す事を指定している時や孫を受取人とした死亡保険金を掛けている時も、孫は相続や遺贈を受ける人に該当するため対象となります。特に代襲相続人ではない孫が遺贈などを受けて相続税を負担する場合、税額が2割増しとなるルールがありますし、死亡保険金は非課税枠を適用する事ができませんので、孫に遺産を渡したい時は生前から少しずつ渡した方が良いでしょう。
ただし、この制度にも例外があり、両親や祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金や教育資金、あるいは結婚や子育て資金を贈与された場合は、その金額が非課税限度額の範囲内であれば3年以内に受け取った財産であっても対象にはならず、同じく贈与税に係る配偶者控除の適用を受けている場合も、その控除額の範囲内であれば対象にはなりません。なお、忘れがちですが、扶養義務者から通常の生活に必要な生活費や教育費を受け取った場合は、一切の税金が掛かりませんので、そうした費用を援助してもらう形にすれば非課税で財産を受け取る事ができます
また、加算対象となる一定の財産には、相続時精算課税を選択した場合の財産の価額も含まれます。この場合、相続開始日前3年以内に関わらず、この制度を選択した時から被相続人の死亡時までに受け取った財産が全て含まれる事になりますので注意して下さい。なお、暦年課税や相続時精算課税によって受け取った財産に贈与税が課税された場合、その税額は負担する相続税から差し引く事ができますが、相続税から引き切れなかった税額については暦年課税は切り捨てられるのに対し、相続時精算課税は相続税の申告をする事で還付される違いがあります。
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