故人に借金があった場合、遺された遺族がしなければならないことは何でしょうか?
相続とは、必ずしもプラスになるばかりではなく、場合によっては、相続をすることで、自身の生活に支障をきたしてしまう場合もあるのです。
目次
借金があった場合には
生前に住宅ローンやクレジットカード、銀行からの借入など何等かの借入があった場合、相続にあたってしておかなければならない手続きがあります。
まず1つは、相続人全員で話し合いの場を設け、遺された借金を相続するかどうかを話合わなくてはなりません。
借金の額によっては、今後継続しての支払いが難しい場合や、支払いを終えた住宅や車などの用途がない場合もあるでしょう。
そのような場合には、「相続放棄」という手続きをしなくてはいけません。
たとえ名義人が亡くなったからといって、借金が自動的になくなるわけではありません。法的に定められた手続きをしなくては、遺された相続人に支払いの義務が引き継がれてしまうのです。
相続放棄には期限があります
相続放棄をする場合には、負債だけでなくそのほかのすべての遺産も併せて放棄することになります。
遺産の中から、取捨選択をすることはできません。
また、相続放棄は相続人ごとに行うことができます。
ある相続人には、負債も含め放棄をし、ある相続人はすべてを放棄するということが可能です。
ですが、もし、3人の相続人のうち2人が相続を放棄した場合、遺された1人の相続には遺された負債をすべて完済しなければ、その対象を手に入れることができませんから、負担は大きいといえるでしょう。
このケースは住宅などの大きな負債がある場合に特にもめるようです。
相続放棄をした後の督促状は?
相続放棄をした場合、裁判所で所定の書類を発行してもらいます。
ですが、この手続きはあくまでも、相続人が正式に相続を放棄したという証明にすぎません。各借入先へは、自らこの書類を持って、通知をしなくてはなりません。
相続を放棄したのだから、今後支払いの義務を継承することはないと明確に通知をします。
この通知のよって、支払いの義務が止まります。
クレジットカードなどの場合、この旨の通知が届くことで、解約となり、相続放棄をした相続人の信用情報に何かしらの汚点が付くこともありません。
逆に、正式な相続放棄の手続きをしなかった場合、支払い義務を相続してしまうことになり、支払いを逃れることはできません。
支払いに困窮した場合の方法としては、所有財産の処分、債務整理、自己破産と自身の想いもよらぬ事態になりかねません。
相続放棄後も督促が届く場合には
相続放棄の手続きをしたにも関わらず、借入金の督促状が届く、放棄できないと想い支払ってしまったというケースも少なくはありません。
このようなケースは、先方も法律を知らないわけではありません。あわよくば、少しでも回収出きればという想いがあるのでしょう。ですが、裁判所で手続きを終えた以上は、支払いの義務はないのですから、支払いをする必要はありません。
内容証明郵便などで正式に通知を行い、その後も継続するようであれば、弁護士への相談や警察への連絡という手段をとりましょう。
この際に、送付されてきた督促状やメールや電話の履歴も処分せずに併せて提出をしましょう。
連帯保証人は適用外です
ここでよく混同されがちなケースとして、故人の連帯保証人になっている場合があります。
もし、親の連帯保証を子供が、夫の連帯保証を妻がしている場合、相続関係が生じていますから、この債務も併せて相続の対象となります。
ですが、この連帯保証人の契約も相続を放棄することで、支払いの義務が免除されます。
よくあるトラブル
相続放棄の法律は、遺された家族の生活を救済するために、大きな意味を持ちます。しかし、逆に貸し付けを行っている業者からすれば、この手続きで莫大な負債を背負いかねない制度でもあります。
相続放棄制度の督促方法
そこでよくあるトラブルとしては、相続放棄制度の仕組みを活用した督促方法です。
相続放棄の手続きには、3か月以内という制限があります。この期間をすぎてしまうと、相続放棄がみとめられないのです。
3カ月の起算日は、故人が死亡した日、もしくは自分が相続人である事を知った日です。
場合によっては、日ごろ疎遠なために、死亡後日がたってから、相続人である事を知る場合や、離婚や認知などにより交流がなく死亡を知らなかった場合もあるからです。
どのような場合であっても、この3カ月という期間が守らなくてはいけません。
3カ月の期限
3カ月を過ぎてしまえば、相続放棄の手続きは認められないのですから、貸し付け業者側も、3カ月は督促を行わないことがあります。3カ月間全く音沙汰がないことで、相続人が借金の存在に気が付かないのです。3カ月が経過した時点で初めて督促が届き、借金の存在を知ったときには、すでに相続放棄の期限が過ぎているという仕組みです。
これでは、弁護士や専門家でも対処のしようがありません。
ですから、故人の資産状況、借金などに関しては必ず見落としのないようにしっかりと確認をしましょう。
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