相続にあたって、法律で相続人の権利として「遺留分」という定めがあります。
この遺留分とは、どのような遺言が遺された場合であっても、法定相続人が最低限相続できる遺産があると定めた法律です。
遺留分は、それぞれの法定相続人の続柄で比率が定められています。
目次
遺留分とは
よく混同されがちな言葉ですが、遺留分と法定相続分とは異なる意味合いを持っています。
遺留分とは
- ①配偶者には、遺産の1/2が認められています
- ②子供にも1/2が認められています。
- ③配偶者、子供が居ない場合、父母が法定相続人となる場合には、遺産の1/3が認められています。
- ④兄弟、姉妹には、遺産の遺留分はありません。
- ⑤養子の場合も、正式に養子縁組を終えている場合には、遺留分が実施同様に認められています。
- ⑥内縁関係の配偶者には、遺留分はありません。
- ⑦非嫡出子の場合、認知がされているかどうかにより権利の内容が変わります。
配偶者、子供が共に遺産の相続人の場合は、遺産の1/2を配偶者と子供で等分することになります。
父母で1/3の遺産をさらに等分して相続をします。
認知をされている場合、実子同様に遺留分が認められています。
ですが、認知をされていない場合、たとえ血縁関係の証明ができた場合であっても相続権が生じませんので、遺留分も発生しないのです。
遺留分を主張する場合とは
遺産相続にあたって、どのような場合に遺留分を主張するのでしょうか?
具体的には
- ①遺産を第三者へ贈与、寄付するよう遺言が遺された場合、法定相続人が遺留分を主張し、自身の相続権分の遺産を相続する場合
- ②特定の法定相続人がすべての遺産を相続するなどのような、利益、不利益の差が大きい遺言が遺された場合に、法定相続人が遺留分を主張する場合
- ③遺産の分割において、法定相続人の今後の生活にただいなる支障をきたし、遺産の分割方法を見直す必要がある場合。
- ④養子や非嫡出子の場合、法的には正当な相続権が認められていますが、その権利が守られない場合もあります。
例えば、すべての財産を寄付するとする遺言が遺された場合、もし故人と生前に同居の家族がいる場合には、その家族は相続にあたって、家を引っ越さなければなりません。ですが、急な引越しには費用もかさむうえに、今後の生活の見通しも経てなければなりません。このような時、遺留分を主張し、自宅を相続することで、今まで通りの生活を続けることが出来る可能性が残るのです。
遺産分割協議の席に呼ばれない場合や不利な分割方法で相続がされる場合もあるでしょう。
このような場合、自身に認められた正当な権利の行使という意味で遺留分を主張する場合があります。
遺留分の主張は
遺留分は法的に認められた正当な権利です。
権利の主張には、一定の期間が定められています。
- ①相続が生じてから、10年以内
- ②遺留分権利者が相続開始・減殺すべき贈与・遺贈のいずれかがあったことを知った時から1年です。
たとえ、法的に認められているとはいえ、この期限を過ぎてからの申し立ては無効となってしまいます。
この期限の説明は難しいように思え、①②の意味するところが矛盾しているように思えることでしょう。
故人が亡くなった日をいつ知ったかが重要
つまり、故人が亡くなった日をいつ知ったかが重要になります。
疎遠になっている場合や遺産分割協議に参加していなかった場合など、相続の内容を後から知る場合もあるでしょう。
後日になって、本来自分にも法定相続の権利があるにも関わらず、自身の遺留分も手元に残らないような相続が行われていたと知った場合、その事態を知った日から1年以内が申し立ての期限という事です。
ただし、申し立ての期限は故人の死亡から10年以内です。
つまり、故人が亡くなってから、11年目に相続の事を知った場合には、たとえ遺留分が遺されていなくとも、10年が経過してしまっているので、申し立てによる遺産の再分割は出来ないという事なのです。
また、法的に遺留分の相続が認められた場合でも、遺産相続から数年が経過してしまっている場合、それぞれの経済状況の変化から、遺留分の回収が困難になる場合もあります。
自分でも申し立てができる?
遺留分の遺産を自身で相続できるように申し立てをする場合には、家庭裁判所へ「遺留分減殺請求」を行います。
この手続きは、必要書類をそろえ、家庭裁判所で手続きを行うことですから、自身でも可能です。
ですが、面倒な点といえば、家庭裁判所では、法令に沿って判決が下り、遺留分も認められるのですが、その後、遺産相続人から遺留分の遺産を回収することが難航するようです。
どんなに、家庭裁判所からの書面があるとはいえ、一度相続した遺産を他人へ渡すことは心地いいものではありませんから、仕方がないでしょう。
また、遺産の再分割が生じますから、全相続人に再度の分割協議に参加してもらう必要があります。相続税も修正申告が必要になります。
このような事態を想定すると、法的な知識のある第三者に仲介に入ってもらい、各種手続きを進めてもらう方がより円滑に済ませることが出来るでしょう。